怖い話の作り方教えます 「日常がヒント」怪談作家に聞く創作のコツ
毎日新聞 / 2024年12月15日 14時23分
川崎市に、怖い話の作り方を教えてくれるいっぷう変わった教室がある。その名も「ゆうえん怪談 創作教室」。講師を務めるのは、普段は会社員で、趣味の一環で作家としても活動している緋乃つかささん(44)。なぜ怪談なのか。怖い話が大好きな記者が訪ねてみた。【宮本麻由】
――作家としての活動はいつごろから始めたのですか。
◆物語を作るようになったのは今から8年くらい前です。妊娠して、育児休暇を取っていたとき、働けないことで精神的に少し落ち込んでしまったんです。昔からゲームやアニメ、本が大好きだったので、ゲームのシナリオを書いてみようと思ったのが作家の道に進んだきっかけです。最初は趣味程度で始めたのですが、「物語を書くのって楽しい」と思い始めたら、どんどん筆が進んで。2022年には、児童書の作家としてデビューすることができました。
――なぜ怪談教室を開くことになったのでしょう。
◆23年5月に小田急線向ケ丘遊園駅近くに「白いハコ」という駅前本棚ができました。本棚を借りた人が、他の人に読んでほしいと思う本を並べ、無料で本を貸し出すというコミュニティースペースです。私は「緋乃つかさ」名義で本棚を借りて、そこに昔から好きな怪談の本や児童書を置きました。特に怪談の本は、子どもたちにとても人気がありました。そこで、白いハコのスタッフから「怪談イベントをやってみませんか」と声を掛けていただき、今年8月の夏休みに子どもたちを対象に「ゆうえん怪談」というイベントを開きました。向ケ丘遊園にまつわるうわさを元に「ゆうえん、ちの、はなし」という自作の怪談を作り、どうせならば怪談創作教室を開こうと思いました。
――皆が怖がるような怪談を作るポイントは?
◆日常の中の非日常というのが面白いんです。昔から学校を舞台にした怖い話が多いですよね。子どもが普段通う学校だからこそ、不安をかき立てられる。ただ、安全安心も大切です。怖いだけじゃなくて、こんなことをしなければ安全だよという逃げ道を作ってあげるのも大事です。他には、「数年前にとある場所であった話」というより、「2年前くらいに◎◎小学校であった話」というように具体的なシチュエーションをはっきりさせて、読み手が想像しやすいようなストーリーにすることも大切です。自分だけが「わっ、怖い!」じゃなくて、客観的に見て、怖いか怖くないかを考えるように心掛けています。最近はオチがないふわっとしたような怪談も人気です。
――これから教室をどのようにしていこうと思っていますか。
◆私は怪談が大好きで、怖い話を作りたくて教室名に「怪談」と入れています。ただ、怖い話を作るのが主な目的というよりも、「文章の書き方を学びたい」や「メールの書き方を学びたい」など、文字で何かを表現したいという方なら誰でも大歓迎です。
緋乃つかさ(ひの・つかさ)さん
1980年7月生まれ。水戸市出身。結婚を機に川崎市で暮らす。会社員で二児の母。作家としても活躍している。デビュー作は「溺愛バンパイア あまえたがりの吸血鬼先生」(講談社青い鳥文庫)。昔から怖い話が好きな生粋の「ホラーマニア」。夢はホラー作品を出すこと。「ゆうえん怪談 創作教室」は、川崎市多摩区の登栄会館で、毎月第3日曜の午後1~3時に開催。
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