「孫の成長は私が…」 遺族、現場で涙拭い 大阪・医院放火3年

大阪・北新地の放火殺人事件から3年となった朝、現場のビルの前には花束と水が供えられていた＝大阪市北区で2024年12月17日午前8時18分、岩本一希撮影

　26人が犠牲となった大阪・北新地の心療内科クリニック放火殺人事件は17日で発生から3年となった。悲しみが消えることはない遺族や関係者らは、かけがえのない人の死を現場で悼んだ。

　息子を亡くしたという70代の女性は自宅で仏壇に花を供えた後、午前8時すぎに現場を訪れた。「今も息子が帰ってくるような気がするのに、帰ってこない。3年たっても、ただただ悲しいです」。息子には妻と子がおり、来院時間があと少し遅ければ事件に巻き込まれなかった可能性があったという。女性は「息子の代わりに私が孫の成長を見届ける。『安心して』と伝えたい」と時折涙を拭いながら話した。

　死亡した西沢弘太郎院長（当時49歳）の妹で、事件後に仏門に入った伸子さん（47）も現場で読経し、犠牲者らの冥福を祈った。

　事件は2021年12月17日午前10時20分ごろ、大阪市北区曽根崎新地1の「西梅田こころとからだのクリニック」で起きた。クリニックは雑居ビルの4階にあり、当時は休職から職場復帰を目指す「リワークプログラム」に多くの患者が参加していた。

　患者だった谷本盛雄容疑者（当時61歳）が持参したガソリンとライターで放火。西沢院長や患者ら計26人を一酸化炭素中毒死させたとされる。容疑者も煙を吸い込み、事件から13日後に死亡したことから不起訴となった。【林みづき、斉藤朋恵、小坂春乃】