能登半島地震1年 豪雨災害が追い打ち 苦境続く被災者たち
毎日新聞 / 2024年12月28日 16時0分
元日の能登半島地震からまもなく1年。最大震度7の地震や津波、火災で甚大な被害を受けた被災地では、9月に豪雨災害が追い打ちをかけた。奥能登に再び雪が舞い始めた12月初旬、今も苦境に立たされている被災者たちを訪ねた。
「こんなとこまで流されてたんだ」。数日後に取り壊しの決まった自宅を訪れた石川県輪島市熊野町の渋洞(しぶどう)福子さん(74)が壊れた門松を手に取った。正月の飾り付けとして玄関先にあったはずの門松は土砂にまみれ、居間まで流されていた。「あれから1年。あっという間だった」
家は地震の影響で崩れた土砂が河川を閉塞(へいそく)させて生じる「土砂ダム」で浸水した。地震当日は子どもや孫ら親族計23人が集う恒例の新年会の最中で、おせち料理を囲んで花札やビンゴ大会と楽しく過ごしていたところだった。
この1年、正月に再び親族一同で集まることを楽しみに生きてきた。1月末にダム状態が解消し、その後は県内の仮設住宅や見なし仮設を転々としながら、高台にある離れを少しずつ住めるように改装した。6月にフローリングが完成し、12月初頭には風呂場も付いた。
しかし9月の豪雨や11月の震度5弱の地震で、雪で孤立しやすい熊野の家で集まるのは中止に。正月は子どもたちが数人ずつ仮設住宅を訪れる予定という。取り壊される家には夫岩夫さん(77)に嫁いでから約50年住んだ。「本当にさみしいね。でも皆無事だっただけで良かったと思わないとね」と言い聞かせるようにつぶやいていた。
同県珠洲(すず)市仁江町の谷内(やち)謙一さん(69)は地震で半壊した家に住み続けていたが、9月の豪雨に襲われた。避難先からぬかるみとがれきを越えて家を見に行くと、高さ1メートル以上の土砂で玄関が埋まっていた。
左官業の主な仕事先は土砂崩れで寸断された国道249号から向かう輪島市内だ。命は無事だったが、家も仕事道具も全て流され、前に進むことのできない1年だった。仁江地区では地震で亡くなった人も多く「『生きていてよかった』とよく言われるけど、死んだ方が良かったかもと思うこともあった」。
12月に珠洲市大谷町の仮設住宅に入り、金沢市に避難していた妻と久々に暮らすことができた。待ち望んでいた輪島への道路の復旧もめどが立ち、「来年は少しはいい年になるか。もうちょっと頑張ろうかな」【滝川大貴】
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