万感の思い込め 東京将棋会館、移転前最後の指し納め
毎日新聞 / 2024年12月23日 11時30分
日本将棋連盟の100周年に伴う新会館移転により、東京都渋谷区の現将棋会館は23日、公式戦最終日を迎え、午前10時、4階の対局室で9局が一斉に始まった。プロを目指していた子供時代から何度も通い続けた会館での指し納めに、それぞれの棋士が万感の思いで臨んだ。現会館は年内に引っ越し作業を全て終え、2025年1月20日から約半年かけて解体される予定。
同世代の好敵手と
羽生善治九段(54)のライバルとして好勝負を繰り広げ、名人8期など12期のタイトルを手にした森内俊之九段(54)もその一人。小学3年の頃に館内で開かれた将棋教室に通って以来、「奨励会を含めて数え切れないくらい対局し、会館とともに過ごしてきた。なくなってしまうのは寂しいが、奨励会の例会に最初に参加した時のことや大一番で痛い逆転負けをしたことなど、いろいろなことを思い出す」と感慨を込めて振り返った。最終日は、しのぎを削ってきた同世代の郷田真隆九段(53)との対局。「ここで指すのは最後なので、今までのことを思い出しながら気持ちを込めて指したい」と静かに語った。
全身全霊で
将棋連盟常務理事を務める森下卓九段(58)は、小学6年の時に小学生名人戦の対局で初めて会館に来て以来、46年間、真剣勝負を繰り広げてきた。将棋連盟からこの日の対局を打診された際は最終日に対局できることを喜び、「ぜひお願いします」と快諾したという。「いろいろな思い出の詰まった会館で、力を出し切って全身全霊で指したい」と力を込めた。
指し納めたはずが……
「4日の順位戦対局が現会館最後の対局だと思っていた」と話すのは藤井猛九段(54)。「その日は指し納めだと思い、しみじみと指した。その対局で勝てたので最後に勝ててよかったと思っていた」と戸惑いを隠さない。「思い出すのは棋士になってからよりも、奨励会や(その下部組織の)研修会を過ごした4階の大広間で対局したり記録係を務めたりして10代の青春時代を過ごした光景ばかり」。最終日も、三つの対局室のふすまを取り払った大広間での対局となった。「できればまた勝って終わりたい」と2度目の指し納めに臨んだ。
新会館の対局1月7日から
現会館からJR千駄ケ谷駅に400メートルほど近付いたビルに入る新会館では、25年1月6日に指し初め式が行われる。翌7日から名人戦A級順位戦の佐藤天彦九段(36)―中村太地八段(36)戦を皮切りに公式戦が始まり、移転が完了する。【丸山進】
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