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体操・橋本大輝選手を育てたクラブ指導者 五輪金に「運命感じた」

毎日新聞 / 2024年12月24日 7時15分

廃校の体育館で指導を続ける山岸信行さん。握っているつり輪はバスケットボールのゴールからつるされている=千葉県香取市で2024年11月8日午後4時29分、合田月美撮影

 東京オリンピックの体操男子個人総合と種目別鉄棒に続き、この夏のパリ大会の団体総合で金メダルを獲得した橋本大輝選手(23)。6歳から基礎をたたき込んだのが「佐原ジュニア体操クラブ」を運営する元高校教師の山岸信行さん(68)だ。同クラブの練習拠点となっている千葉県香取市の山あいにある廃校の体育館を訪ねた。【合田月美】

 ――クラブ開設の経緯を教えてください。

 ◆中学から大学まで体操競技部に所属していたこともあり、最初に赴任した佐原高校の定時制に部活を作ったり、周辺の中学を回って有望な子を集めたりして、やがて全国高校総体(インターハイ)や国体に出るようになりました。でも、転勤があった。体操をやりたい子を置き去りにしなければならず、一貫した指導ができるようにクラブを作りました。

 --橋本選手を指導することになったいきさつは。

 ◆佐原高で行われていた学校開放でクラブの練習をしたのですが、体育館の反対側でバスケットボール部を指導していたのが橋本選手の母親でした。3人の子も付いてきていましたが、隅っこでゲームをやっていた。「こっちでトランポリンでもやったら」と上の子2人を誘ったら3番目(橋本選手)も付いてきた。それが最初でした。ゲームさえやっていなければ、声はかけなかっただろうね。

 --約10年後に同クラブOBの大竹秀一監督が指導する市立船橋高体操部に送り出したのですね。

 ◆橋本(選手)は自分で考えながらやる子だったから練習しろとは言わなかったですが、もうやめろ、というまでやめなかった。体操の練習は「補強」と柔軟と逆立ち。私は八千代高に通いましたが恩師・梶原義實先生から教わったことを今も大事にしています。恩師は(団体総合などで金メダルを獲得した)昭和の東京五輪で体操のコーチを務め、教え子である私が57年後の2度目の東京五輪でチャンピオンを送り出せたことに運命を感じている。私には夢があってね。それは行きつけの焼き鳥屋で中継を見ながら、金メダルを取った選手を指さして「あいつは俺が教えたんだ」って隣の酔っ払いに明かすこと。東京五輪の時はその店はなくなっちゃっていたけど、日本体操協会副会長から「ありがとう」と電話をもらいました。

 --体操は子供の成長によい影響がありそうですね。

 ◆3~10歳、特に就学前は「ゴールデンエイジ」と言って一生で最も運動神経が発達する時期。この頃の運動が生涯にわたる体力や能力を左右します。

 --最後に健康維持に役立つ運動を教えていただけませんか。

 ◆まず歩くこと。腕を振りながら大股で早歩きがいい。そしてラジオ体操。ちゃんとやろうとすると選手だってなかなかできない。伸ばすところがちゃんと伸びているか、鏡の前で競技みたいに自己採点しながらやってください。減点されない体操を目指しましょう。

やまぎし・のぶゆき

 千葉県四街道市出身。東海大卒。2022年春まで県立高校で教べんをとった。その傍ら1982年に「佐原ジュニア体操クラブ」を設立。現在、2クラスで計40人余を教えている。運動や地域スポーツに関する講演もしている。

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