年収106万円の壁撤廃 3号廃止は見送り 厚労省部会まとめ
毎日新聞 / 2024年12月24日 14時0分
厚生労働省は24日の社会保障審議会年金部会で、次期年金制度改革に向けた報告書案を示し、大筋了承された。年収の壁による働き控えをなくそうと賃金要件(年収換算106万円以上)を撤廃し、厚生年金保険料の労使折半ルールを見直す特例措置や、厚生年金の積立金を活用して基礎年金の給付水準を3割底上げする改革案などを盛り込んだ。ただ、連合などが将来的な廃止を求める「第3号被保険者制度」の見直しは見送った。
報告書では、次期年金制度改革について「平均寿命の延伸や家族構成やライフスタイルの多様化、女性・高齢者の就業拡大、賃上げなどの変化へ対応する」と明記した。
具体的な対応案として、基礎年金の給付水準を底上げするため、厚生年金の積立金を活用し、物価や賃金の伸びよりも年金額を低く抑える期間の終了時期を2036年度に前倒しする。自民党は経済状況が良ければ減額期間が短縮されるため発動の条件を付けるよう求め、報告書案にも盛り込まれたが、一部の委員が「議論していない」などと反発。部会長が引き取ったが、微修正にとどまる見通しだ。
年収の壁対策として、厚生年金の加入要件を大幅に緩和。最低賃金の上昇を受け、週20時間の就労時間要件を満たせば年収106万円を超える地域が増えていることから、26年10月めどで月額賃金8万8000円以上の賃金要件を撤廃。従業員51人以上の企業規模要件も27年10月廃止を想定する。
厚生年金保険料の労使折半ルールを見直し、企業が多く負担できる時限的な特例措置を26年4月めどで導入する。標準報酬月額12・6万円(年収151万円)未満を対象とする。
一定の給与がある高齢者の厚生年金を減額する「在職老齢年金」も見直す。年金の減額が始まる基準額を現行の50万円から62万円か71万円に引き上げることを検討中だ。遺族厚生年金で支給に男女差が残る場合の是正措置なども盛り込んだ。
ニッセイ基礎研究所・中嶋邦夫上席研究員の話
公的年金制度は長い人生に関わる長期の約束だが、社会の変化に合わせることも重要だ。その意味でも国民年金保険料の納付期間を現在の40年から5年延長する案が早々に見送られたのは禍根を残す。基礎年金の給付水準を上げるだけでなく、厚生年金の積立金の一部を基礎年金の拠出に充てる案に対し、会社員の反発を和らげる効果もあったはずだ。【宇多川はるか】
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