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「細く長く続けたい」 青森で人気の温泉宿経営者が語る十和田の魅力

毎日新聞 / 2024年12月30日 8時30分

いろりには宿泊客から贈られたぬいぐるみやイラストが並んでいる=青森県十和田市で2024年11月27日午後4時39分

 国内外から年間約200万人の観光客が訪れる青森県十和田市の奥入瀬渓流にほど近い場所に築100年を超える古民家造りの「温泉民宿南部屋」がある。四季の移ろいとともに2匹の愛犬の様子もネット交流サービス(SNS)で発信している。「昔ながらの風情を保って細く長く、十和田でお客さんを迎え続けたい」と埼玉県から移住し、宿を営む田村暁さん(48)は語る。【聞き手・松本信太郎】

 ――十和田市へ移住したきっかけは。

 ◆元々世界各地の秘境を巡る旅行会社で働いていました。主に南アジアを担当し、インドやブータン、ネパール、チベットなどに添乗員として同行しました。インドの首都ニューデリーにも4年ほど駐在し、事務所の一角をゲストハウスとしてオープンし、食事も提供しました。40歳を機に日本国内で温泉宿を経営したいという思いが強まり、事業承継できる宿を探したところ、南部屋に出合いました。

 ――決め手は何でしたか。

 ◆すぐそばに奥入瀬渓流、十和田湖や八甲田連峰など世界に誇る観光資産があったことです。温泉の泉質も湯の花が豊富で、初めて入浴して就寝すると驚くほど疲れが取れたのをはっきりと覚えています。宿の食器や布団などの備品、更には常連客までをもほぼそのまま引き継げたのも助かりました。民宿経営のノウハウやせんべい汁など郷土料理も先代のおかみから手ほどきを受けました。豊かな自然に囲まれた場所で時間がゆっくりと流れているように感じ、移住を決めました。

 ――暮らしてみて気づいた事は。

 ◆最初の2~3年は手探りでした。積雪の多さは予想していましたが、真冬に野菜を台所に置いていたら凍ってしまったのには驚きました。冷蔵庫に入れることで野菜を凍らせず、無駄にしない。勉強になりました。宿泊客をもてなすのに必死で余裕を失っている時期もありましたがコロナ禍で人の訪れが途絶え、我に返りました。現在は私なりのペースで経営できるようになってきました。

 ――十和田の魅力は。

 ◆春のサクラ、夏の新緑、秋の紅葉、冬は温泉。年間を通じて雄大な自然を身近に感じられることでしょうか。新幹線や飛行機、バスなど公共交通機関のアクセスが良いのも知ってほしいですね。開拓の歴史がある街なのでフレンドリーな人が多いと感じます。宿を引き継いでから始めた日帰り入浴は多くの地元住民も訪れてくれるようになりました。農繁期を終えたご夫婦が骨休めで宿泊してくれて話も弾みます。

 ――愛犬2匹も人気のようですね。

 ◆茶色模様のリュックと白色のクララは玄関で宿泊客のお見送りをする時があります。その様子をSNSで発信したところ、思わぬ反響があり驚きました。遠方から会いに来てくれる方もいて和みます。先ごろリュックが体調を崩した時には近くに北里大獣医学部の付属病院があったので心強かったです。

 ――今後の展望を教えてください。

 ◆古い建物と温泉だけの宿ですが、十和田の食材を使った食事を提供しているのでくつろいでもらえたらうれしいです。海外からの宿泊客の特徴は、東京や京都、富士山などメジャーなところを訪れた後、さらに日本を知りたいという意欲が旺盛ですね。何度も来てくれる方もいて励みになっています。10年後、20年後も「細く長く」をモットーに続けていきます。

たむら・さとる

 1976年、埼玉県大宮市(現さいたま市西区)生まれ。大学卒業後、バンド活動をしながら調理師のアルバイトやバスツアーの添乗員として働く。2007年、秘境系の「西遊旅行」入社。16年、青森県十和田市の「温泉民宿南部屋」の経営を引き継ぐ。

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