阪神大震災のアスベスト労災 肺がんで初認定 解体建物の石綿吸引か
毎日新聞 / 2024年12月25日 5時0分
1995年1月の阪神大震災でアスベスト(石綿)を吸って肺がんを発症したとして労災を申請した男性について、神戸東労働基準監督署が2023年度に労災認定していたことが厚生労働省などへの取材で判明した。これまで阪神大震災では、石綿が主な原因で発症する中皮腫で労災が認定された例はあったが、肺がんでは初めて。
阪神大震災は25年1月で発生から30年を迎える。肺がんは石綿を吸ってから30~40年の潜伏期間を経て発症することが多く、支援団体は「阪神大震災の影響で肺がんなどを発症する時期にさしかかっていると言える」と注意を呼びかける。
男性が当時勤務していた神戸市内の企業によると、男性は自分の仕事で石綿を扱ってはいなかったが、震災発生から約3年間、同市内の自宅からオートバイで市中心部の会社へ通った。また顧客の建物の被災状況を見て回った。
そうした行動の際に、周囲で解体中などの建物から飛散した石綿を吸った可能性があるという。その後、肺がんを発症し、石綿を吸ったことを示す医学的な証拠が神戸市内の病院で見つかった。男性は24年に80代前半で亡くなった。
阪神大震災の発生当時、国内では石綿の使用が禁止されておらず、多くの建物に耐火や防音などの目的で石綿が使われていた。建物の倒壊に伴い石綿が飛散したのに加え、倒壊建物の解体が十分な対策がなく行われたため、飛散が拡大したと指摘されている。
石綿の労災は、中皮腫(潜伏期間約20~60年)では石綿を吸ったことが分かれば認定される。これに対し肺がんは、たばこなど他の原因でも発症しやすいため、石綿を一定量吸ったことを示す胸部の異変や石綿の繊維などの「医学上の証拠」の存在が認定条件になっている。男性が勤務していた企業の社長は「仕事とは関係ないと思っていたので石綿による肺がんと聞いて驚いたが、考えられる可能性を説明し、認定に協力した」と話す。
一方、直接的に石綿を扱わなかったが、阪神大震災の復興関連作業に携わった大阪市の会社の従業員が中皮腫を発症し、淀川労基署が22年度に労災認定していたことも新たに分かった。これで阪神大震災で中皮腫を発症したとして労災認定されたのは、公務災害を含めて判明しているだけで7人となった。兵庫県外の会社の認定者は初めて。
石綿の被害者らを支援しているNPOひょうご労働安全衛生センター(078・382・2118)の西山和宏事務局長は「多量の石綿が飛散していた震災の被災地では、間接的な吸引でもリスクが高いことを示すのではないか。潜伏期間を考えると、さらに被害が広がることも懸念される。体の不調を覚えたら積極的に医療機関で受診してほしい」と訴えている。【大島秀利】
長谷川誠紀・兵庫医科大特別招へい教授の話
CT画像で肺の外側の膜が厚くなる「胸膜プラーク」が明瞭であれば、石綿の専門医でなくても見つけられ、石綿を吸った一つの証拠になる。肺組織から石綿繊維などが検出されればそれも証拠になるが、肺がん発症者は年間10万人以上いて、検査機関が限られ手間と時間がかかるので、石綿との接点がない限りは通常は調べない。プラークが見つかったり、石綿を吸った履歴があったりすれば、石綿の専門医に相談することが重要だ。
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