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踏切でれき死強要疑い4人、問えるか殺人罪 焦点は被害者の精神状態

毎日新聞 / 2024年12月25日 17時39分

高野修さんが電車にはねられ死亡した踏切=東京都板橋区で2023年12月19日、菅健吾撮影

 東京都板橋区で2023年12月、男性が踏切内で死亡した事件で、警視庁は同僚4人を殺人容疑などで逮捕した。被害者が暴力などで精神的に追い詰められ、電車にはねられるのを強要されたと判断したという。同じような構図の殺人事件はまれで、裁判で殺人罪に問えるかは被害者の精神状態の立証が焦点となる。

 事件では、警視庁捜査1課が8日、塗装会社「エムエー建装」代表取締役の佐々木学容疑者(39)ら男性4人を逮捕した。4人は、同僚だった高野修さん(当時56歳)を23年12月3日未明に板橋区内で、電車にはねられるよう仕向けて殺害した疑いがある。

 4人は被害者を直接手にかけない「間接正犯」で立件された。間接正犯の殺人容疑の適用は異例という。

 捜査で警視庁が着目したのが、00年に名古屋市であった交通事故死に見せかけた殺人未遂事件だった。

 加害者の男性は被害女性と偽装結婚。自分を受取人にした約6億円の生命保険をかけたうえで、女性が乗った車ごと海に転落するよう命じた。女性は指示に従ったが、車が水没する前に脱出して助かった。

 女性は度重なる暴行と脅迫を受けていた。最高裁第3小法廷は04年の決定で、「他の行為を選択できない精神状態に陥らせ、死亡する危険の高い行為をさせたのだから、殺人の実行行為に当たる」との判断を示し、殺人未遂罪を認定した。

 今回の事件では、警視庁の捜査で、20年ごろから、高野さんが佐々木容疑者らに熱湯を体にかけられるなど日常的に暴力を受けていたことが判明した。

 さらに、給料が払われず、食事に困るほど経済的に支配され、佐々木容疑者らの指示に従わざるを得ない状態に追い詰められていたと推認。こうした被害者の精神状態に関する証拠を積み重ねて、事件当時に現場の踏切にいなかった佐々木容疑者ら2人を含めて、4人に殺人容疑を適用した。

 一方で殺人罪に問うための立証のハードルは高い。中央大法科大学院の井田良教授(刑法)は「名古屋市の事件では被害者に保険金をかけ、動機がはっきりしていたうえ、被害者の証言もあった。今回は動機が不透明なうえ、被害者が死亡している」と指摘する。

 そのうえで「客観的な証拠から被害者と容疑者の関係を明らかにし、通常の意思決定ができないほどに追い詰められていたか立証できるかが重要。検察もその点を踏まえ、自殺教唆罪などではなく殺人罪で起訴することが可能かどうかを判断するだろう」と話す。

 4人の勾留期限の28日に向けて、東京地検は起訴の可否を判断するとみられる。【岩崎歩、菅健吾、朝比奈由佳】

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