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「100年に1度」渋谷の再開発 「若者の街」から「大人の街」へ

毎日新聞 / 2024年12月31日 10時0分

高層ビルが建ち並ぶ渋谷駅前でスマートフォンを掲げながら歩く人たち=東京都渋谷区で2024年12月23日、小出洋平撮影

 JR渋谷駅前のスクランブル交差点から駅方向を見ると、東急百貨店の跡地で工事用クレーンが視界に入る。2027年度開業に向け、渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟の整備が進む。開発事業者は観光や国際交流、先端技術に関する施設を入れ、情報の発信拠点を目指している。

 いま東京・渋谷は、訪日外国人客やビジネスパーソンに向けた高級ホテルやオフィスビルの建設が相次ぐ。100年に1度の規模といわれる再開発により、ファッションや音楽で独自の若者文化を生み出してきた街は、大人の街へと変わりつつある。

IT企業集まる「ビットバレー」

 渋谷の再開発のきっかけは、東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転だった。直通のための東横線の地下化が02年に決まり、駅や線路に未利用地が生まれることで開発の動きが加速。オフィスや飲食店が入る複合ビルが次々に誕生した。

 渋谷駅そばでは渋谷ヒカリエの12年開業を皮切りに、渋谷キャスト、渋谷ストリーム、渋谷ソラスタ、渋谷フクラス、渋谷スクランブルスクエア東棟と続いた。IT企業や新興企業が拠点を構え、起業家が集まった。

 渋谷には20世紀末にも多くのIT企業が集まり、米サンフランシスコのITベンチャー拠点「シリコンバレー」になぞらえて「ビット(渋い)バレー(谷)」と呼ばれた。ただオフィス需要に供給が追いつかず、一部は六本木や品川方面へ移転した。渋谷で再開発を手がける企業幹部は「当時を教訓とし、オフィス需要を取りこぼさないように意識している」と語る。

「世界から集客」高級ホテル林立

 再開発のもう一つの特徴が、渋谷に少なかった高級ホテルの建設だ。27年夏には、道玄坂沿いで三菱地所が手がける再開発によって、屋上プールを備えたホテルが開業を予定する。

 29年度には「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」が完了を予定し、中国で展開するホテル「ザ・ハウス・コレクティブ」が日本に初進出する。JR山手線東側の「Shibuya REGENERATION Project」の計画でも、バスターミナルとホテルが入るビルが29年度に完成する。

 一足早く、渋谷駅北側には22年に「オールデイプレイス渋谷」、23年に「ホテルインディゴ東京渋谷」が開業した。駅南側でも「ハイアットハウス東京渋谷」が24年から営業を始めた。

 なぜホテルやオフィスの建設が続くのか。

 国学院大経済学部の田原裕子教授(都市地理学)は「世界中から人や企業を呼び込むためだ」と語る。かつて渋谷駅と直結していた東横百貨店には仕事帰りの会社員が訪れ、質の良い日用品を買い求めた。「以前はターミナル開発といえば、沿線住民の生活や文化の質向上が主目的だったが、現在は目的が変わった」と田原教授は指摘する。

若者たちの行き場は…

 再び、渋谷駅前。若者に人気の「MIYASHITA PARK」の屋上では北風が吹きつけるなか、10代の男女がベンチで語り合い、ダンスに興じていた。「ヒカリエやスクランブルスクエアは高くて入れない」と口をそろえた。

 大阪から観光に来た20代のカップルも「とにかく単価が高い」と嘆いた。ビルの中の店だと飲み物は1杯1000円近い。一方、以前からあるカフェチェーン店には行列ができていた。

 再開発によって街は新しく生まれ変わる。その半面、似たビルが並び、独自の街並みや若者の行き場が失われるという指摘がある。そんな指摘に対し、田原教授はこう語った。

 「人口減少が進む日本国内の若者だけを相手にしていたら、経済成長は見込めない。国内外から人を呼び込んでグローバルな都市間競争に勝ち残り、世界の渋谷を目指す。現代における東京の再開発とは、そういうものです」【長屋美乃里】

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