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公取委、芸能界の契約巡り初の実態調査 「独立・移籍」問題浮き彫り

毎日新聞 / 2024年12月26日 15時30分

公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影

 公正取引委員会は26日、タレントや俳優、ミュージシャンら芸能人の契約などを巡る音楽・放送業界のトラブルについて、初の実態調査結果を公表した。芸能事務所から独立や移籍をしようとした際に妨害や脅しを受けたとの声が複数寄せられるなど、業界内には芸能人の独立や移籍を「ご法度」と捉える意識がいまだ根強いといった問題点を指摘。違法性が疑われる行為も確認され、「評判を気にする業界。声を上げにくく問題が深刻化した恐れもある」との見方を示した。

 公取委は2628の芸能事務所にアンケートを配布して810の回答を得たほか、事務所関係者や芸能人、有識者ら計95人にヒアリングを実施。関連する901件の情報提供も加味して実態を調べた。

 芸能人側からは、所属する事務所に独立や移籍の希望を伝えたところ、悪評を流されたり、「実質引退になるが大丈夫か」といった脅し文句を言われたりしたとの声が複数寄せられた。「独立したタレントを出演させるなら、うちの所属タレントは使わせない」と事務所から圧力を受けたとするテレビ局があり、事務所側からは「事務所間の仁義もあり、引き抜きに見えかねない移籍話は受けない」などの意見も聞かれた。

 さらに独立後、芸名やグループ名の権利は事務所に帰属するとして元の所属先から使用を制限されていたケースを確認。本名で芸能活動していたタレントが独立を機に改名を迫られる場合も含め、問題があるとした。

 このほか、テレビ局が番組に出演する芸能人側と契約書を交わさないなど、業界のずさんな実態も判明。「テレビ局から契約条件を事前に示してもらえない」との声のほか、スケジュールを「仮」として一旦押さえられた上で収録が近づくとキャンセルされる、いわゆる「仮バラシ」に対する補塡(ほてん)がないとの問題提起がなされた。対象にはNHKや民放キー局も含まれるという。

 公取委は、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」や「取引妨害」「取引拒絶」などに該当する恐れのあるような行為が調査で確認されたと指摘。複数の芸能事務所が結託して移籍を妨げれば、談合やカルテルに当たる可能性もあるとしている。

 音楽・放送業界を巡っては公取委が2019年に、人気アイドルグループ「SMAP」の元メンバーを出演させないようテレビ局に圧力をかけたのは独禁法違反につながる疑いがあるとして旧ジャニーズ事務所を調べ、注意したことがある。今回の調査では「SMAP騒動以降、業界が変わりつつある」との声も寄せられたという。【渡辺暢】

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