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シートベルト、誤着用で凶器に? 小学生は「腹に致命傷」が高割合

毎日新聞 / 2024年12月29日 11時30分

写真はイメージ=ゲッティ

 シートベルトを着用して車に同乗し事故死した子供の死因を調べたところ、小学生は「腹部」に致命傷を負う割合が中高生らよりも約3倍高かった――。そんな調査結果を公益財団法人交通事故総合分析センター(東京)がまとめた。児童は体格によって正しい位置でシートベルトを着用できないことが一因とみられ、研究員は「ベルトの位置次第で命に関わる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 2000年施行の改正道路交通法で6歳未満の子供にはチャイルドシートの使用が義務付けられた。6歳以上は未使用でも違反にならないが、単純に年齢で区切るだけでは事故死の危険を軽減できない可能性が浮かび上がった。

 分析センターは、警察庁から提供された過去10年間(13~22年)の交通事故記録を基に、シートベルトを着用して車に同乗し事故死した6~19歳の子供計64人が、体のどの部位に致命傷を負ったかを調べた。いずれもチャイルドシートや、座高を上げるジュニアシートは使用していなかった。

 小学生(6~12歳)と、体格が大人に近づく中高生ら(13~19歳)の2グループに分けて比べたところ、両グループとも「頭部」が4割前後を占めて最多だった。割合に差が出たのは「腹部」で、中高生らは51人中5人(9・8%)にとどまったのに対し、小学生は13人中4人(30・8%)で3倍超だった。胸部や頸(けい)部ではグループ間で大きな差はなかった。

 分析した研究員の菱川豊裕さんは腹部の致命傷について「全員とは言えないが、腰ベルトにより損傷を受けた人が含まれているはずだ」と指摘。「飛行機の離陸前に『ベルトは腰の低い位置で締めてください』とアナウンスされるように、車でも腰ベルトは太ももに近い位置を巻くように正しく着用しないと意味がない。小さな体格の児童はシートベルトが正しい位置にかからないことがあるため、6歳以上であってもジュニアシートなど補助装置を使ってほしい」と話す。

 福岡市では24年8月、シートベルトが凶器となった可能性がある痛ましい事故が起きた。8月18日午前11時10分ごろ、福岡市早良区の国道263号で西鉄の路線バスと軽乗用車が正面衝突し、軽乗用車に乗っていた7歳と5歳の姉妹が死亡した。福岡県警によると、2人はシートベルトを着用していたが、チャイルドシートやジュニアシートは使用していなかった。2人とも死因は出血性ショックで、腹部の内出血が激しく、シートベルトにより強く圧迫された可能性がある。

 日本自動車連盟(JAF)は24年9月、チャイルドシートの使用推奨基準を身長140センチ未満から150センチ未満に引き上げた。身長はあくまで目安で、シートベルトが首や腹部にかからないことが重要だという。注意点として、肩ベルトは鎖骨の中央、胸骨、あばら骨の3カ所の硬い骨を通す▽腰ベルトは骨盤(腰骨)を押さえる――ことなどを挙げる。JAFの担当者は「大人は子供のシートベルトが正しく締められているかを十分確認してほしい」と呼びかける。【宗岡敬介】

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