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七代目円楽を襲名する三遊亭王楽さん「考えられないコラボしたい」

毎日新聞 / 2025年1月6日 8時15分

NHK新人演芸大賞を受賞した三遊亭王楽さん=東京都渋谷区のNHKで2008年10月18日、油井雅和撮影

 世間に最も知られている落語家の名跡の一つは「三遊亭円楽」に違いない。五代目、六代目は人気長寿番組「笑点」(日本テレビ系)で活躍し、落語の面白さを世に伝え続けた。六代目が亡くなって2年余り、2月に円楽の名前が帰ってくる。五代目最後の弟子で、三遊亭好楽さんの長男、三遊亭王楽さん(47)が七代目円楽を襲名する。今年は飛躍の年となる王楽さんに抱負を聞いた。【油井雅和】

 ――七代目円楽襲名のきっかけは一昨年の12月でした。

 ◆驚きました。六代目円楽のおかみさんから「楽ちゃんから聞いてるのは」(七代目は)自分だと言われ、本当によくぞ円楽を譲ってくださったと思います。本当のプレッシャーはこれからでしょうね。まだピンときていないところがあるので。それからは年が明けてから、いろんな方に報告にうかがい、披露目をどうするかなど、進めていました。今年の2月20日の披露パーティーから円楽になります。笑点でも披露口上をしていただく予定です。

 うちの一門(五代目円楽一門会)は、(三遊亭)兼好兄さんと萬橘が今すごくがんばっているので、ぼくらが一門をもっと盛り上げたい。うちの一門の二ツ目も頑張っていて、うちはよくも悪くも仲がいい。その仲の良さを前面に出しつつ、切磋琢磨(せっさたくま)していくのがいいと思います。

 ――これからの自分、七代目円楽の役割についてどう考えていますか。

 ◆お世話になっている(春風亭)小朝師匠からは、「襲名で大きな花火は打ち上げられるだろうけれど、二の矢、三の矢を考えておきなさい」と言われました。たとえば、これまでは考えられないようなコラボ、講談の神田伯山さんとガチでやる会とか、立川談春さんの会にaikoさんがゲスト出演したような、他ジャンルとのコラボとか、今、ちょっといろいろ考えています。

 ――師匠の五代目、名前を譲られた六代目のどんな思いを、七代目として大切にしていきたいですか。

 ◆この落語の世界をさらに盛り上げようというのが2人の共通点でした。五代目は落語界を俯瞰(ふかん)してよく見てました。たとえば、「小朝みたいな人間があと5人いれば助かるんだけどな」と。プロデュースができる人、落語界を目立たせるために動ける人、ということでしょう。あと、「(春風亭)昇太も(立川)志の輔も、(笑福亭)鶴瓶も、オレが落語界のトップなんだという矜持(きょうじ)を持ってやっている、だから好きなんですよ」と話していました。

 五代目の意志を受け継いだ六代目は、博多・天神落語まつりとか、さっぽろ落語まつりなどをプロデュースして大成功させました。

 落語界を盛り上げていきたい、という思いは、私にもあります。その意味では、話が来る来ないは別にして、何でもやります。

 ――記者会見では父親で兄弟子の好楽さんのことを誰も聞きませんでしたが(笑い)。

 ◆好楽は「なんでも好きなようにやれ」が口癖で、ものすごく感謝しています。ズボラでおおらかで、口を出してきたりすることもなく、「噺家(はなしか)になれ」とも一度も言われたことがなかったから、なったんだと思う。あの人は意外と、気を使ってないようで、気を使っていて、それをあえて言わない人です。

 父がああいう人だから僕は動けたし、前座なのに小朝、(桂)三枝(文枝)、鶴瓶といった師匠のところに、出演をお願いするなど、自由に動かせてもらいました。

 ――落語芸術協会の新宿・末広亭の高座にも多く出演し、力をつけてこられました。

 ◆前座の頃から勉強会では大ネタをかけてきたけれど、好楽は文句を一切言わなかった。芸協の番組に入れていただいてからは、きちんと仕事をしなきゃいけない、絶対に時間を守る、そしてウケさせなきゃいけない、ということで、やはり鍛えられました。

 ――落語家になるきっかけも好楽さんではなかったそうで。

 ◆好楽は自宅で稽古(けいこ)しない人なんです。学生時代は映画好きで、好楽と同じ一門の三遊亭円橘師匠の会に「映画評論家が来るから見に来れば」と誘われ、足を運んだら、落語ってすごい面白い。上野の鈴本演芸場に行ったら夜の寄席でトリは柳家小三治師匠。客はガラガラなのに「付き馬」を聞いて、なんて面白いんだ、と。

 大学卒業の直前、好楽がソファに座って新聞読んでるところで、初めて正座をして「ちょっとすいません、噺家になりたいんですけど。だれに入門するかは決めてません」「ああ、そう。最近聴きにいってるみたいだね。好きになったところにどこでもいきなさい。うちでもいいよ」。でも、父親という選択肢は、恥ずかしくてありませんでした。好楽の師匠、五代目円楽へ入門をお願いしたわけです。

 ――今後の七代目の使命はどう考えていますか。

 ◆芸能の神様というのはいると思います。講談の神田伯山、浪曲の玉川太福が、活動弁士の坂本頼光のような天才が、芸能を絶やさないように救世主が出てくる。自分が売れることが、うまくなりたいということは置いといて、普通に生きている人は落語に出合わない人の方がまだまだ多いんじゃないですか。僕は初めて落語を見た時、こんな面白いものが世の中にあるのかって思ったから、今やっているし、もっと広めたいんです。

 襲名披露も頑張りますが、この先、役者もやってみたいですね。なにか役に立つだろうし、自分の芸に戻って来る、反映されるんじゃないかと思って。声かけてください(笑い)。

     ×      ×

 王楽改め七代目三遊亭円楽襲名披露興行(東京・全6公演)は、2月26日~3月2日、有楽町・よみうりホール。好楽、林家木久扇、桂文枝、三遊亭小遊三、春風亭小朝、笑福亭鶴瓶、柳亭市馬、春風亭昇太、立川志の輔、林家正蔵、立川談春、林家たい平、立川晴の輔、春風亭一之輔、桂宮治らが日替わりで出演。以降、全国ツアーを予定している。

さんゆうてい・おうらく

 1977年、東京都練馬区生まれ。父は三遊亭好楽。駒沢大文学部卒。2001年、父の師匠・五代目三遊亭円楽に入門。27番目、最後の弟子で、王楽と名付けられる。好楽とは「親子で兄弟弟子」に。08年、NHK新人演芸大賞落語部門大賞。09年真打ち昇進。

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