昭和と同世代の商業ビル 空襲・震災耐え抜き、今なお存在感 熊本
毎日新聞 / 2025年1月3日 15時30分
忙しく行き交う熊本市電を見守るように、くすんだ灰色の壁の建物がたたずむ。市電と同じ1924(大正13)年に完成した熊本で初の商業ビル「早野ビル」(熊本市中央区)は、2年後の改元で始まった「昭和」と同世代だ。高さ16メートルの「背丈」で、新しい高層の建物に周囲を囲まれているが、今も確かな存在感を示している。
市電の線路に面した出入り口から見える段差の大きい石造りの階段、薄暗い廊下、花びらを散らしたような装飾窓はほとんど当初のまま。大正、昭和初期の雰囲気を伝える。
市文化財課によると、設計は県立工業学校(現・熊本工高)出身の矢上信次。東京で関東大震災(23年)に遭ったといい、その経験を踏まえた耐震性と防火性能を、屋上に塔屋を付けた鉄筋コンクリート造り4階のビルに詰め込んだ。
昭和の前半は、黎明(れいめい)期だった放送局の準備事務所や金融機関の支店が入り、「新時代のビルディング」として知られた。窓が少なく鉄製のシャッターを各所に設けた延焼防止の対策で、戦時中は空襲を耐え抜いた。
建築主、早野半平の孫俊一さん(79)は、20代までビル1階で生活。俊一さんのいとこ、森下自(より)子さん(79)=熊本県八代市=は高校時代、通学のためビルに下宿し、伯母でもある俊一さんの母親が「空襲の焼け野原で(ビルだけが)ぽつんと立っていた」と話していた様子を覚えている。
時を経て2016年の熊本地震でも大きな被害を免れ、耐久性、耐震性を示した。
18区画あるテナントは現在、大方埋まっている。3階で自らデザイン、彫金したジュエリーの店「FU(フー)」を経営する坂口涼子さん(47)は、3年前に立ち寄った際、「入り口でビルの空気に引き込まれた」といい、出店を決めた。店内は壁や天井を白く塗った以外、もとの風合いを生かしている。
俊一さんは現役の医師で今も毎朝、出勤前にビルに立ち寄る。「100年も生きていたら人間と一緒で維持管理が大変。頑張って長生きしたのだから、これからもいたわりたい」【津島史人】
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