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ペット用豪華おせち、売れています 進む家族化、売り上げ年々増加

毎日新聞 / 2024年12月30日 10時0分

イオンペットの14300円のペット用おせち=同社提供

 愛犬などにペット用のおせちを与え、正月気分を一緒に味わう飼い主が増えている。ペットの「家族化」が進む中で、家族の行事をペットと共に楽しむスタイルが浸透。1万円を超える高級おせちも続々と登場し、百貨店や料理店などもペット向け商品の販売に乗り出している。「おせちも一緒に?」と驚く人もいるかもしれない。ペットの家族化から見える愛犬家の心理とは――。

 冷凍おせちに年越しそば、クリスマスケーキ………。食品スーパーのような品ぞろえだが、12月下旬にこれらの商品を並べていたのは、福岡市のペット用品店「ホームワイドペット&グリーン和白店」だ。売れ筋は2000~4000円の冷凍おせち。ペット用に塩分などが調整してあるが、人も食べられる商品が多いという。

 ペットのエサといえばドッグフードが一般的だが、店の担当者によると、20年ほど前から、人が口にするような商品が登場してきた。通販も含め、ここ数年は売り上げが毎年1割ほど伸びており、今年は約30種類をそろえた。担当者は「ペットと一緒に同じ商品を食べたいお客様も多い」と話す。

 ペット用品店「ぺテモ」を展開する「イオンペット」も、2008年ごろから犬や猫向けのおせちを発売。今年も和風・洋風のおせちをそろえ、懐石料理のような1万円超の商品もよく売れるという。この冬は前年同期の2割増しのペースで売り上げが伸びている。

 百貨店でも、常連客などから「愛犬用も欲しい」という要望が寄せられるといい、おせちの通販ラインナップにペット向け商品を用意する企業が増えている。

 人の食品の中には、タマネギなど犬が食べると危険な食材がある。塩分にも注意が必要で、ペット向け商品は専門家が監修しているのが一般的だ。ただ、人もおいしく感じるよう工夫されたものが多く、消費税率が食品扱いの10%の商品もあるという。

 なぜこうした商品が増えたのか。キーワードはペットの「家族化」だ。2000年ごろから室内飼育が普及し、人とペットが一緒に過ごす時間が増えた。その結果、単なる愛玩動物ではなく、食事や遊び、旅行など家族の行事をペットと共有しようとする飼い主が増えているという。

 人と犬との関わりを研究する獣医師の増田宏司・東京農業大教授(動物行動学)は「犬と接する時間が増えるほど飼い主の愛情が強まる。以前は飼い主の威厳を示すために寝る場所や食べ物を分ける風潮があったが、飼い主は愛犬への後ろめたさも感じていた。20年ほど前から人と動物がシェアできる食品が増え、飼い主も後ろめたさを感じずに犬に与えられるようになった」と解説する。

「人間用」誤って与えないで

 動物に正月やクリスマスといった文化はないが、「犬は飼い主との関係を強く求める動物だと遺伝子レベルで判明している。飼い主といつも一緒に行動することが犬の喜びだ。飼い主から普段と違う食べ物をもらい、いつもと違う場所に行くのは喜びにつながる」とし、「飼い主の感情をくみ取る能力も分かっており、おせちを与えて喜ぶ飼い主の気持ちに、犬も共感を覚えているはずだ」と話す。

 増田教授は、ペット用のおせちについて「あくまでペット向けに開発されたもので、人間用のおせちを混同して与えないでほしい。老犬にも注意が必要。日本の犬は肥満も多い。人間と同じように正月太りにも気を付けてほしい」とも話している。【久野洋】

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