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滋賀県庁の「秘密」とは 隠れた地下通路も 国登録有形文化財10年

毎日新聞 / 2024年12月30日 14時15分

戦前の庁舎で最大級の規模を持つ県庁=滋賀県庁で2024年12月24日午後3時8分、飯塚りりん撮影

 滋賀県の顔でもある「県庁」。本館が国登録有形文化財となって10年がたつことを記念した60人定員の県庁見学ツアーに422人の応募があったことを聞き、驚いた。「何か隠れた魅力があるのか」。ちょうど登録から10年となる19日に催されたツアーを取材すると、県政担当記者として毎日通っているのに見過ごしていた魅力、さらに、隠れた魅力も満載だった。【飯塚りりん】

 スタートは正面玄関。案内役を務めた県文化財保護課の藤原啓太技師の「曲線がなく、彫刻も少ない」というデザインの特徴を聞きながら、改めて壮大な外観を見つめた。本館は日中戦争さなかの1939年に完成。当時は材料を節約することが求められていたため、特に鉄は当初の計画の3分の1まで減らしたというが、大きさは譲らなかった。外観の幅106メートルは戦前の庁舎では最大級の規模だったという。

 内部は藤原さんいわく「控えめながらも細かい装飾がみっちり」。まず1階の正面玄関の天井を見上げると、小さな3本線の漆喰(しっくい)彫刻があった。2階の同じ空間には2本線、知事室には歯形、広報課にはぶどうの形など、重要な部屋や空間の天井にはそれぞれ異なる装飾があるという。

 毎日、取材部署を目指して急いで上り下りする階段の踊り場もじっくり見つめると、いろいろな「すてき」が目白押しだった。日光を受けるステンドグラスと階段壁面にある信楽焼の漆喰彫刻。彫刻は「アカンサス」という花をモチーフにした装飾で、さまざまなステンドグラスの色が映った床と相まって美しい。

 3階の知事応接室へ。ツアーの参加者たちも「リーダーの部屋」が待望だったのか、スマートフォンのシャッター音がひときわ響いた。藤原さんから「足踏みしてみてください」と声を掛けられた参加者たちが一斉に足踏みをすると、「ギシッ」と木のきしむ音。じゅうたんに隠れて見えなかったが、木を斜めに組み合わせた「寄木(よせぎ)張り」の床だという。

 その後、県議会の本会議場に案内されたところで、藤原さんから本館全体の構造の「ある秘密」が明かされた。昭和に入ると、動線を確保するために「日」の字型の構造が主流となったが、本館は「ロ」の字型を採用。早稲田大の大隈講堂を手がけた佐藤功一氏がこだわった設計で、中庭を広く確保することで光を多く取り込む狙いがあったという。確かに朝、光が差し込む廊下を歩きながら出勤すると、少し気分が上がる。また、大きな中庭も職員がご飯を食べる憩いの場となっている。設計者の思惑通りだ。

 最後に案内されたのは、地下1階。この場所が私には最も大きな「隠れた魅力」だった。第一印象は「シャッターを閉め切った商店街」。だが、間違っていなかった。設計当初は防空壕(ごう)としての役割も想定していたが、利用されることはなく、戦後になってからは理髪店や喫茶店、クリーニング店などがそろう「小さな商店街」として、県民にも広く利用されていた。現在は倉庫として使われている。

 その奥には、「地下通路」がある。現在、県庁の向かいには道路を挟んでNHK大津放送局があるが、かつては地下でつながっていたというのだ。ただし、行き来していた建物はNHKではなく、当時「滋賀会館」と呼ばれた県の施設だった。今出入り口は塞がれているが、「地下通路」の響きに歴史ロマンを感じた。

 後日、藤原さんに参加者のアンケート結果を聞くと、参加理由について「市役所はよく行くが、県庁はあまり行かないので見てみたかった」という意見が最も多かったという。今回のツアーで紹介されたのはほんの一部。もっと県民に身近な場所にならないともったいない。

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