2025年、私たちの暮らしはこう変わる 減税、電気代補助復活も
毎日新聞 / 2024年12月31日 9時30分
2025年はお金や働き方など暮らしに関わるサービスがさまざま変わります。手取りを増やす施策が始まる一方で、高額医療費の負担限度額が引き上げられるなど、負担が増える見直しもあります。主なものをまとめました。【塩田彩、藤渕志保、杉山雄飛、高田奈実】
手取り増へ所得税などの見直し
所得税のかかり始める「年収103万円の壁」は、物価高の影響を反映して123万円に引き上げられます。25年分の所得から適用を開始し、年収が2500万円以下の人は減税になる見通しです。
最低限の生活費に課税しない基礎控除(48万円)と、会社員らの経費を差し引く給与所得控除(55万円)をそれぞれ10万円引き上げます。システム対応などに時間がかかることから、25年中は給与から税金分を差し引く源泉徴収ではなく、年末調整で対応するため、手取り増を感じられるのは25年末になりそうです。
政府・与党は今のところ20万円の引き上げを予定しますが、野党との協議や国会審議を経て引き上げ幅が拡大する可能性もあります。
「年収103万円の壁」の引き上げに伴い、19~22歳の大学生年代を扶養する親などが対象の特定扶養控除の要件も25年から緩和されます。
現行制度は、アルバイトなどで働く子の年収が103万円以下の場合、親は所得税63万円、住民税45万円の控除が受けられます。子の年収が103万円を超えると扶養の対象から外れて親の税負担が増えるため、子が働き控えをする一因となっていました。
25年から要件を150万円に引き上げます。子の年収が150万円を超えると親の控除額が段階的に縮小していき、188万円超で控除がなくなる仕組みも導入します。
電気代補助が復活、ガソリン代は上昇の公算
24年10月に終了した電気・ガス料金への補助金が、25年1~3月に規模を縮小して復活します。
暖房需要で電気消費量が多い1~2月は、家庭向けでは1キロワット時あたり2・5円、ガスは1立方メートルあたり10円を補助します。電気代は標準家庭(使用量400キロワット時)で月1000円、ガス代と合わせて計1300円程度の負担軽減となります。
3月は電気が1キロワット時あたり1・3円、ガスは1立方メートルあたり5円に補助額を縮小します。
一方、ガソリン価格抑制のための補助は段階的に縮小するため、価格の上昇が見込まれます。
段階的な縮小は12月中旬にスタートし、既に価格の上昇が始まっています。レギュラー1リットルあたりの全国平均小売価格は、25年1月中旬までは180円程度、2月中旬までは185円程度を目安に抑制幅を縮めます。3月以降は、価格上昇が月5円程度に収まるよう補助率を調節します。
食品値上げ、再燃の見通し
25年は食品の値上げが再燃する見通しです。帝国データバンクの集計によると、1~4月に6121品目の値上げが予定されており、23年末に行った同様の集計に比べ約6割の増加になります。1月に1年半ぶりとなるパン製品の一斉値上げが、4月にはビールの一斉値上げがそれぞれ行われます。
値上げの理由として、数年来の原材料高に加え、物流費や人件費の上昇を挙げる企業が増えており、帝国データバンクは「24年中は積極的な値上げを手控える動きもみられたが、企業努力が限界に達し、少なくとも4月ごろまで値上げラッシュが続く」と分析しています。
4月からは子育て支援策拡充
夫は子どもが生まれてから8週間以内、妻は産後休業後8週間以内に育児休業を取得すれば、最大28日間、育休取得前の手取りの10割相当の給付金を受け取れます。夫婦ともに条件を満たす必要があります。これまでは8割相当でしたが、給付金の水準が引き上げられました。
2歳未満の子どもを育てながら時短勤務をする場合には、時短勤務中の賃金総額の10%相当の給付金を受け取れるようにもなります。時短勤務中に賃金が低下するケースが多いため、給付金で補うのが狙いです。
拡充される支援策はまだあります。子どもが3歳になるまで従業員がテレワークを選択できるよう、就業規則を見直すことなどが企業の努力義務となります。
育児のために残業免除を申請できる期間も広がります。「子どもが3歳になるまで」から、「小学校入学前まで」に変更されます。子どもが病気やケガの場合に原則年5日まで取得できる看護休暇も、取得期間が「小学校入学前」から「小学3年生まで」に延びます。感染症による学級閉鎖や入学式などでも利用できるようになります。
保護者の就労状況に関わらず保育所などに6カ月~3歳未満の子を預けられる「こども誰でも通園制度」が一部の地方自治体で始まります。預けられるのは基本的に月10時間までで、独自に利用時間を上乗せする自治体もあります。
保育所や幼稚園、地域の子育て支援拠点など、市区町村の認可を受けた多様な施設で実施される予定です。1時間当たり300円程度の利用料で済みます。全国共通のオンラインシステムで、予約申し込みや育児に関する情報共有ができる自治体もあります。
24年度までは試行的事業として全国118自治体(24年8月時点)で実施されていましたが、25年度から制度化されて実施自治体が広がり、26年度から全国で本格的に実施されます。
10月からは、3歳~小学校入学前までの子どもを育てる従業員を対象に、月10日以上のテレワーク▽時差出勤▽短時間勤務――などから二つ以上の選択肢を設け、従業員が希望する働き方を選べるように企業に求めます。
SNS事業者らに誹謗中傷対策を義務化
SNS(ネット交流サービス)やインターネット上で深刻化する誹謗(ひぼう)中傷や有害情報への対策を強化するため、「情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダー責任制限法)」が5月17日までに施行されます。SNSなどを運営する大規模プラットフォーム事業者らに、対応の迅速化と運用状況の透明化を義務づけます。
事業者は、権利を侵害された人が投稿の削除を申し出られる窓口を整備し、専門の担当者を置くなどして削除申請に1週間程度で対応することを求められます。削除要請のあった投稿の取り扱いや、匿名投稿者ら発信者情報の開示について、現在は事業者によって対応にバラツキがありますが、法律施行後は事業者に削除基準の公表が義務づけられるため、削除要請をしやすくなったり、確実な対応を求めやすくなったりする効果が期待されます。
高額医療の負担増
8月からは、高額な医療費がかかった場合の自己負担限度額が増えます。高額療養費制度が見直され、平均的な所得層(年収約370万~約770万円)の人の自己負担限度額が8万100円から8万8200円に引き上げられます。他の所得区分でも額が上昇しますので注意が必要です。この見直しは3段階で27年8月まで続きます。
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