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3000点の昭和グッズずらり 高知の「お宝屋敷」に詰まった思い出

毎日新聞 / 2024年12月31日 14時15分

大量の昭和レトログッズを展示する「お宝屋敷おおとよ」を運営する中西三男さん=高知県大豊町で2024年12月2日午前11時55分、小林理撮影

 高知自動車道大豊インターチェンジを下りて国道32号を進み、1本横道に入ったところに赤茶のトタン屋根の建物がたたずむ。軒先に古い商品看板や丸形の郵便ポストが並ぶ「昭和グッズ」の展示館「昭和レトロ お宝屋敷おおとよ」(高知県大豊町穴内)だ。「国道沿いにあれば目立つのよ。それは分かっとる。でも、通りがかりじゃなくて、目指して来てほしいから」。お宝屋敷の主、中西三男さん(77)は軽妙な調子で話す。

 木製の引き戸をがらりと開けると、そこは昭和レトロの世界。古い商品ポスターやブリキのおもちゃ、茶わんやちゃぶ台などの生活用具がずらりと並ぶ。倉庫に保管しているものも含めて3000点はあると言うが「ちゃんと数えたことはないからだいたいやね、だいたい」と笑う。そんな「ユルさ」もいい。

 写真店の経営が本業の中西さん。急速に進むデジタル化に合わせて2005年に業容を縮小し、仕事以外の時間が増えた。自分の楽しいこと、面白いことが何かできないか。思いついたのが、子どもの頃に親しんだ「懐かしいもの」を収集することだった。

 買い集めないというルールを自分に課した。「町の写真屋さん」としての人脈を生かし、「古くて捨てるものはない?」と地域を訪ね歩いた。「ゴミみたいなもんやけど、こんなんでええの?」と家の中から引っ張り出してくれた品々を引き取っていった。わずか半年で相当数が集まり、展示館をオープンさせたのは06年。「カネがないからもらいもので集めよったけど、持っていた人の『顔』が見えるから、買うよりずーっと楽しかったな」と振り返る。

 「本館」と「別館」からなる展示館は、自宅兼写真店の両隣の空き家を改装した。別館には、硬貨を入れるとさまざまな音楽が聞ける「ジュークボックス」が展示されている。音響機器が普及するまで各地の娯楽施設に設置されていたものだ。マニア向けに高値で売れるブリキのおもちゃを「ここに置いてほしいから」と送ってくれた人もいた。気づけば、さまざまな人たちの昭和の思い出が詰まった展示館が出来上がっていた。

 ほぼ毎日、全国から老若男女がお宝屋敷を目指してやってくる。団体客も多い。事前予約して老人会がバスに乗って来ることもあり、展示館前に「歓迎○○老人会様」と貼り出して待つ。館内を案内する中西さんの冗談を交えた語りは好評だ。「見るだけやったら、つまらんもん。自分の楽しいことを、笑って楽しんでもらってなんぼやん」

 中西さんは高校卒業後、大阪の新聞社で勤務。「熱気があって面白かった」と懐かしむ。1980年に大豊町に戻って行商で食品を売り歩き、平成が始まった1989年に写真店を開業。結婚式などで撮影した写真をまとめて手作りしたアルバムは好評だったという。

 自身にとって「昭和」とは。「とにかく元気があったね。もうかるか分からんでも、とにかく頑張ってやっちゃる、という気概があった」と当時の世相を振り返る。そのがむしゃさらの名残を求めて、人々はお宝屋敷を訪れたくなるのかもしれない。

 入場料300円(中学生以下無料)。不定休。問い合わせは0887・73・0469。【小林理】

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