諦める理由探した毎日 背中押した「まっとるからね」 能登地震1年
毎日新聞 / 2025年1月1日 16時18分
最大震度7を観測し、500人以上が死亡した能登半島地震から1年を迎えた1日、石川県は同県輪島市の日本航空学園能登空港キャンパスで、能登豪雨の犠牲者らも含めて追悼式を開催した。
遺族代表として、父洋一さん(当時82歳)を亡くした小林由紀子さん(53)=同県穴水町=が言葉を述べた。涙で声を詰まらせながら、「絶望感に打ちひしがれた」と振り返り、支援の手を差し伸べた全国への感謝を語った。
小林さんのあいさつ全文は次の通り。
◇
能登半島地震の発災から1年を迎える今日、このような追悼の場を設けていただき、深く感謝申し上げます。遺族を代表し、ご挨拶(あいさつ)を申し上げます。
私は穴水町で衣料品店を営んでおります。この店は、曽祖父の代から130年以上にわたり、地域の皆様に支えられ続いてきた小さな店です。4年前、先代の父から店を引き継ぎ、夫と共に二人三脚で切り盛りしてきました。町の皆さんが気軽に立ち寄れる場所として、日々の暮らしを少しでも彩る店でありたいと、努力を重ねてきました。
しかし、元日の地震は、その店を一瞬にして瓦礫(がれき)の山へと変えました。それだけではありません。近くにあった実家も倒壊し、その瓦礫の中で、最愛の父を失いました。仕事一筋で家族を支え、いつも優しい笑顔で見守ってくれた父。その突然の出来事に、悲しみ、絶望感に打ちひしがれました。
以来、ここで生活し、店を再建することはもう無理だ、と考えるようになりました。また地震が来たらどうなるのか。過疎が進むこの町で店を再開してもお客様に来ていただけるのだろうか。そうした不安が頭をよぎり、何より、父を亡くし、父が守り続けてきた大切な店を失った現実に、心が何度も折れそうでした。「もうここで終わりにしてもいいのかな」と、自分に言い聞かせ、あきらめる理由を探す毎日でした。
そんな中で、支えてくれたのは、地域の方々からの温かい言葉でした。「あんた、大丈夫やったか、無理せんでいいよ」との言葉になぐさめられ、「まっとるからね」の言葉に背中を押されました。私たちの店は、この地域に支えられてここまで来ることができたんだと、少しずつ、前向きな気持ちになることができました。
そして、再建を決意し、現在、仮設商店街「あなみずスマイルマルシェ」で営業を再開しています。半歩ずつですが、夫と共に、この店を守り抜き、地域の皆さんと共に歩んでいく。それが亡くなった父への感謝であり、地域の皆さんへの恩返しであると考えています。
最後に、これまで多くのご支援と励ましをいただいた皆様に心より感謝申し上げます。そして、この度の災害と豪雨でお亡くなりになられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げ、能登の復興を願いながら、遺族代表の言葉とさせていただきます。
令和7年1月1日 小林由紀子
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