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ヒトがヘビを恐れる理由 原因は「クネクネ」ではない、あの特徴

毎日新聞 / 2025年1月1日 5時0分

「幸運を呼ぶ守り神」「神の使い」などとされる国の天然記念物「岩国のシロヘビ」。正体はアオダイショウのアルビノ(白化)個体=山口県岩国市で2024年8月6日、露木陽介撮影

 2025年は巳(み)年。世界保健機関(WHO)によると、ヘビにかまれて死亡する人は毎年、世界で数万人にも上る。そんなヘビをヒトを含むサルの仲間(霊長類)が本能的に恐ろしく感じる理由は、その「ウロコ」のせいだったとする研究成果を、名古屋大の川合伸幸教授(認知科学)が取りまとめた。

 霊長類の祖先の小型哺乳類は6500万年前ごろから樹上での生活を始めたとされ、当時の主な捕食者は背丈の高い木に登れたヘビだったとみられている。霊長類が視覚を発達させて大きな脳を持つようになったのは、一番の脅威となるヘビを素早く見つけるためだったと考える「ヘビ検出理論」も提唱されている。

 川合教授によると、これまでの実験で、一度もヘビを見たことがないサルがヘビの写真を他の動物より早く見つけたり、人間の赤ちゃんからヘビの写真に強く反応する脳波が検出されたりすることが分かっていた。ただ、具体的にヘビのどのような特徴に反応しているかは未解明だった。

 そこで川合教授はヘビの特徴のウロコに注目し、本物のヘビを見たことがないニホンザル3頭を対象に実験を実施。計9枚の白黒写真を使い、8枚は同じ写真だが1枚だけ違う画像をタッチできれば餌がもらえるようにした上で、8枚のイモリの写真と1枚のヘビの写真からヘビを選ばせた。すると8枚のヘビと1枚のイモリからイモリを選ぶより、見つける時間が3頭とも早かった。これは、サルが他の動物より早くヘビを見つけるという先行実験とも一致する。

 次にイモリの写真にヘビのウロコを画像処理で「着用」させて同様の実験をし、見つける早さを比べた。すると2頭はイモリを見つける早さがヘビと同程度、1頭はヘビよりも早くイモリを発見した。これらから、サルがヘビのクネクネした動きや形ではなく、ウロコに対して敏感に反応していることが判明したという。

 川合教授は「霊長類の祖先は進化の過程で、ヘビのウロコを見つけるように視覚システムを進化させてきたと考えられる」と話す。研究成果は2024年11月10日付の科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。【露木陽介】

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