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「それでも生きていく」 客を大切にした父の思い受け継ぎ、店舗再開

毎日新聞 / 2025年1月1日 16時21分

元日の追悼式に臨む心境を語る小林由紀子さん=石川県穴水町の町役場で2024年12月23日、国本ようこ撮影

 「本当はあの日を思い出したくない。でも支えてくれた皆さんに、『元気だよ』と伝えたい」。能登半島地震による自宅の倒壊で父洋一さん(当時82歳)を亡くした小林由紀子さん(53)=石川県穴水町=は、こう胸の内を明かす。

 「支えてくれたのは地域の方々の温かい言葉。多くの支援と励ましをいただいた皆さまに心より感謝したい」。1日に開かれた県主催の追悼式で遺族代表としてあいさつに臨み、周囲への謝意を重ねて語った。

 4年前、洋一さんは穴水町で営んでいた衣料品店を小林さん夫妻に託した。新型コロナウイルス禍の前は、お茶やコーヒーも率先して出すなど、いつも気さくに客を迎えた。代替わり後も毎日店を訪れ、お客さんに「座らんかいね」と椅子を勧めては談笑した。

 「自分だけ良ければいいという店はだめ。お客さんを大事にしないと」というのが洋一さんの口癖だった。小林さんはそんな父を「お店のことで頭がいっぱい。ずっと現役でした」としのぶ。

 家族のだんらんに洋一さんがいないことにはまだ慣れない。洋一さん宅から出てきた、孫に渡すはずだったお年玉を、小林さんの高校3年の長女は「ずっと使わない」と大事に保管している。この先の元日も、思い出したくない記憶がよみがえる日になるだろう。

 店舗は全壊、小林さん宅は一部損壊となり2024年8月まで町外で避難生活を続けた。同年9月には能登豪雨が被災地に追い打ちをかけた。「それでも生きていかないといけない」。新聞で目にした、豪雨被災者の言葉が心にしみたという。

 縁あって、翌10月に町内の仮設商店街で店を再開した。洋一さんがしていたように、地域に支えられながら、お客さんが気軽に立ち寄れるような店にしたい、と考えている。「父は本当に店が好きだったので、続けて安心させてあげたかった」と笑みを浮かべる。心の中で「見守ってください」と語りかけている。【国本ようこ】

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