カリスマ書店員の選書で売り上げ好調 今村翔吾さん経営、開店1年
毎日新聞 / 2025年1月3日 15時30分
直木賞作家の今村翔吾さん(40)が経営し、2024年12月に開店1年を迎えた「佐賀之書店」の売り上げが好調だ。人気を支えるのは「カリスマ書店員」として知られる本間悠店長(45)。豊富な読書経験に裏付けられた「目利き」で選書されたお薦め本に固定のファンも多い。
同年12月下旬の夕刻。JR佐賀駅構内の店舗では陳列棚の本を手に取る買い物客らでにぎわっていた。本間さんは陳列の乱れを見つけると、さりげなく本を整頓していった。
本間さんは北海道室蘭市出身。小学生の頃は母の教育方針で「ゲームやテレビが禁止で本を読むしかなかった」。祖父母の家や学校の図書館にある本を読みあさった。
「字を読むのが好き。活字中毒」と自任する。小中学校時代は学校の図書館の本を片っ端から読み込んで「制覇」。今も1日1冊のペースで本を読む。
北海道大学中退後、人材サービス会社勤務を経て、夫の転勤に合わせて2009年に佐賀市に移住。15年から佐賀市の書店で働き始めると、ポップや陳列の工夫で「カリスマ書店員」としてSNS(ネット交流サービス)や地元メディアで話題となった。
佐賀之書店は駅構内にあった書店の復活を望む声が上がっていた中、23年12月3日にオープン。本間さんは旧知の今村さんから店長として声を掛けられ、快諾した。
1年間の売り上げは「目標以上だった」と好調だ。売り上げを支えるのは本間さんの豊富な読書経験に裏打ちされた選書サービスと陳列の工夫だ。
1年間に読んだ本の中から一番面白かった本を毎年1月に発表する「ほんま大賞」もその一つ。6回目となった24年は井上荒野さんの小説「照子と瑠衣」を選んだ。「本を読むきっかけにしてもらいたいので、なるべく展開が面白くて読みやすい本をお薦めしている」と話す。
本の陳列では「隣に興味を引きそうな本を並べて本同士のつながりを考えて並べるように」と工夫。個人的に一番好きなジャンルの「ホラー小説」のコーナーも開設している。
24年10月に県内で開催された国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会に合わせて陳列した「スポーツ文庫フェア」では競技を題材にした本を紹介した。剣道着姿の学生が剣道を題材にした本を買っていくのを見て、「本当にうれしかった」と振り返る。
全国的に書店の数が減る中でも「自分の持っている情報の外に出られる本を選べるのがリアルな書店のメリット」と揺るがない。「目当て以外の本と出合えるきっかけを提案できる書店でありたい。佐賀之書店に行ったら何か面白いことをやっていると思ってもらえるように頑張りたい」と駅ナカ書店の未来を見据える。【五十嵐隆浩】
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