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愛らしい看板学芸員“ぶんちゃん” 白文鳥生誕の地で魅力伝える

毎日新聞 / 2025年1月4日 20時16分

“同僚”の手に乗る看板学芸員の「ぶんちゃん」=愛知県弥富市で2024年12月14日午前10時41分、加藤沙波撮影

 新年が明け、「今年はどこに行こうかな?」なんて旅の計画を立てる人も多いのでは。東海地方にはまだまだ知られていない魅力ある場所が眠っている。行ってみたくなる、そして誰かに教えたくなる。そんな魅力あふれる珍スポットを記者たちが訪ねた。

 チュンチュン、チュンチュン……。資料館に入ると、かわいらしい鳴き声が聞こえてきた。声の主は、真っ白な体にピンクのくちばしをした雌の白文鳥「ぶんちゃん」。体長10センチの小さな体ながら、看板“学芸員”として弥富市歴史民俗資料館(愛知県弥富市)を支えるスタッフの一員だ。

 サービス精神旺盛で、初対面の記者の手にひょいっと飛び乗ってきてくれた。「か、かわいい」。あまりの愛らしさに、日ごろの疲れも一気に吹き飛びそうになった。

 館内には、市の歴史や産業、自然などを紹介するさまざまな資料が多数展示されている。そこに混じって、ぶんちゃん宛てのファンレターや手作りグッズなども並び、人気ぶりがうかがえる。でも、ぶんちゃんがここにいる理由は、単なる癒やしのためではない。

 弥富市は江戸時代から続く文鳥の産地で、白文鳥の生誕の地でもある。最盛期には市内に300軒ほどあったとされる文鳥農家だが、現在はわずか2軒のみ。そんな「消滅の危機」を救うべく、ぶんちゃんは自らの姿を通し、文鳥の魅力を伝えているのだ。

 ぶんちゃんが来たのは、生まれたばかりの2018年5月。以前から市名産の金魚を飼育、展示をしていた同館だが、学芸員の大坪恵里佳さん(32)が「文鳥も飼ってみたい」と館長に相談し、文鳥農家からヒナを譲り受けることになった。

 当初は3時間おきの餌やりなどこまめなケアが必要で、大坪さんが自宅に連れて帰って世話をしたこともあった。ぶんちゃんの姿を同館のSNS(ネット交流サービス)にアップすると、文鳥好きらの目に留まり、注目を集めるようになった。

 ケージの中のぶらんこに乗ったり、水浴びをしたり、おみくじを引いて来館者の運勢を占ったり……。そんな愛らしい姿が話題となり、来館者は倍増。22年4月に同館がリニューアルし、ぶんちゃんの隣で桜文鳥「さくら」の飼育も始まると、市の人口に匹敵する年間約4万人が訪れる人気スポットになった。

 大の文鳥好きで、神奈川県から2カ月に1度はぶんちゃんに会いに訪れる会社員の高田由梨さん(34)は「人間と対等に接することができ、喜怒哀楽がしっかりしているのが文鳥の魅力。ぶんちゃんは特に社交性があって賢い」とぞっこんだ。

 現在6歳のぶんちゃん。人間でいえば50~60代ぐらいで、体調によってはふれあいを中止することも。でも、今後もできる限り、来館者との交流は続けていくつもりだ。大坪さんは「こんなにも愛される存在になるとは思ってもいなかった。元気に長生きしてくれたら」と願う。

 弥富市の歴史や文化の発信に一役買っているぶんちゃん。いつまでも元気に飛び回っていてほしい。【加藤沙波】

弥富市歴史民俗資料館

 愛知県弥富市前ケ須町南本田347。弥富駅から徒歩10分。午前9時~午後5時、月曜と年末年始は休館。入館無料。郷土の歴史や文化などを伝えるほか、文鳥や金魚を飼育、展示する。1回200円で金魚すくいも楽しめる。

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