体弱かったのに…会場に毎日通った「万博おばあちゃん」のガッツ
毎日新聞 / 2025年1月9日 11時30分
愛知、中国・上海、韓国・麗水(ヨス)の各万博に毎日通い「万博おばあちゃん」として話題になった愛知県瀬戸市の山田外美代(とみよ)さん(75)。大阪・関西万博の全期間入場を目指して、会場近くに住宅を借り、「記録」に挑みます。山田さんが連日「愛・地球博(愛知万博)」に通う姿を、2005年8月に掲載しています。山田さんを「師匠」に記者が一緒にパビリオンを回りました。(2005年8月31日・愛知県版、年齢などは当時のまま)
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これまでに「万博はもう数回目」「いや、数十回も来たわ」という入場者は見たことがある。かくいう私も休みを除くと、まず間違いなく100日以上は(取材で)会場を訪れているだろう。ところがそれをも上回るツワモノがいた。地元・瀬戸市今林町の主婦、山田外美代さん(56)。何と今のところ、皆勤賞。1日3回来ることもあるため、通算入場回数はすでに約180回に上るという。そんな山田さんを師匠と仰ぎ、万博への思いを聞きながら、会場の“穴場”を巡ってみた。【樋岡徹也】
新鮮な出合い、ナショナルデー
山田さんはほぼ毎日、瀬戸会場から入り、朝は空いているモリゾー・ゴンドラで長久手会場へと移る。常に長蛇の列が出来、多くの入場者が断念を迫られる人気館「トヨタグループ館」には19回、「日立グループ館」だって8回……。「童心に帰れて楽しいわ」とお気に入りのワンダーサーカス電力館に至っては120回以上訪れている。最近は、もはや企業館などには目もくれず、外国館へとまっしぐらに向かうのが日課となっている。
待ち合わせをした8月17日は、電力館前で午前9時過ぎに合流。この時間だと、まだ北ゲートでは入場待ちの人たちの列が続いている。
山田さんがこの場所を選んだのにはちゃんとした理由がある。「天井のテントにクイズがあるんです。8月に入ってからですよ」。なるほど、そこを見るとエネルギーに関する質問と答えが書かれてある。通行量は比較的多い場所だが、どれほどの人がそんなことを知っているだろうか。
すべての企業・外国館を制覇した山田さんにとって、見尽くしてしまっ常設展示の魅力はもはやさほどでもない。それよりも、各館などで開かれる音楽や舞踊などの日替わりイベントこそが楽しみの一つ。ナショナルデーは毎日、内容が変わるため、いつも新鮮な出合いに巡り合える。
コツは常にコモン前にある催事情報に目を留めること。そして必ず回るのが、シヤチハタマークタウン。「毎日日付が替わるスタンプを押しているんです。自分で『毎日万博に行っている』と言っても証明にならないでしょ」と。このスタンプこそが彼女の「完全入場」の証明書なのだ。
挑戦297回…悔い残る--「サツキとメイの家」
そんな山田さんでさえ、「まだ、見たことがないの」と悔しがるモノがある。自ら「汚点」とまで表現するのが、完全予約制度を取る人気館「サツキとメイの家」。
開幕当初のコンビニの端末を使った電話予約では、家族らと約260回試みたがかなわず。その後、制度が変更されたはがき応募でも37枚出してダメだった。「どうせ閉幕後も(現地に)残るんだから……」と強がるが、やっぱりどこか悔しそう。
7月29日から始まった夜のパレードも中止が長引いて見られなかったが、再開2日後に無事、観覧。「北ゲートの階段でやったショーは見損なったけど。でも、とりあえず見られてよかった」とほっとした様子だ。
これこそ「功労者」ではないですか。万博協会さん。もし、山田さんが全日程を貫徹したら、ぜひ、サツキの家に招待してあげてくださいな。
弱かった体も“皆勤”で元気に 外国人スタッフとは仲良し
山田さんは瀬戸市育ち。大阪万博(70年)は4回も、名古屋の世界デザイン博(89年)には2回行った。それなりには“万博フリーク”?
当初は家族3人分として当日券を6枚買っていたが、ボランティアの関係で開幕前に会場を訪れたり、パビリオンが次々と完成するのを目の当たりにし、「きれいで、楽しそうだな」と全期間券を購入した。
基本的には1人で回っているが、豊田市立藤岡中教師の長男和弘さん(32)らと一緒のときもある。和弘さんは「母はもともと体が弱かったが、万博に来るようになって元気になった。毎日何キロも歩いているせいかな」と笑う。
海外旅行好きの山田さんにとって、何よりの楽しみは外国人スタッフとの会話。カタール館は全員仲良し。チュニジア館で陶芸を実演しているロトフィさんとは閉幕後、山田さんの自宅に招く約束をしているほど。アフリカ共同館のバザールを一緒に歩いていると、早速、ロトフィさんの知り合いと会って話が弾んだ。あちこちに友達がいて、とにかく顔が広い。
ちなみに山田さんの一押しパビリオンは、古代遺跡・遺物を見ながら自然も体感できるメキシコ館とか。「何より美しさ。綿糸で刺繍(ししゅう)した衣類は、万博が終わったら持って帰れないかしら」と、ひそかに狙っているお気に入りの宝物だ。
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