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移民問題は「21世紀の革命」 岐路に立つ日本、選択肢は

毎日新聞 / 2025年1月7日 11時30分

写真はイメージ=ゲッティ

 今、世界中で移民を巡る議論が熱い。

 欧州では1年間に100万人以上が流入した2015年の「欧州難民危機」を経て、難民・移民に特に厳しい目が向けられるようになった。「反移民」の動きは英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)や欧州各国での極右・右派勢力の伸長につながり、米国でも不法移民対策を強調するトランプ前大統領が返り咲きを決めた。

 移民問題を21世紀における「革命」と位置づけたのは、東欧ブルガリア出身の政治学者、イワン・クラステフ氏だ。この新たな「革命」で、欧州では外国人を脅威に感じる市民が政治勢力として台頭したと分析した。移民問題は各国で政治状況を左右する重要課題となったのだ。

 国際移住機関(IOM)の報告書によると、20年段階で移民の人口に占める割合は米国13%、ドイツ17%、英国13%、フランス12%――などで、反移民の雰囲気が強まる欧米各国で移民が人口の1割以上を占める。一方、日本は2%と割合は低い。

 だが、日本も今後、欧米並みの「移民社会」になる可能性が強まっている。

 日本政府は23年6月、家族帯同で無期限就労が可能な「特定技能2号」の対象分野の大幅な拡大を閣議決定し、外国人労働者に対して永住につながる道を開いた。24年には技能実習制度に代わる育成就労制度の創設も決めた。高齢・少子化で人手不足が深刻化する中、外国人労働者の受け入れ増加に向け、注力してきているのである。

 国立社会保障・人口問題研究所は23年4月、70年には日本の人口に占める外国人の割合が10%に達するとの予測を発表している。すでに川口市は7・8%、蕨市は12・4%と高く、日本の未来を先取りしているとも言える。

 19年4月、ブレグジット取材の一環で、政治と移民を巡る問題の権威であるエリック・カウフマン教授(当時ロンドン大、現バッキンガム大)を取材した。

 日本で特定技能制度が創設された直後。日本の事情もよく知るカウフマン氏は、ほとんどの特定技能資格者が上限5年の在留で帰国することになる当時の制度に言及したうえで「決まった年限で帰国する限りは、(日本で移民問題は)脅威とはならないだろう」と述べた。だが、裏を返せば、年限を区切らず永住に道が開かれれば問題化する可能性がある――とも言える。

 日本政府は移民受け入れ政策を否定している。だが、人口に占める外国人の割合が欧米並みに近づく未来が予測され、制度変更で永住者が増える方向性も定まった。カウフマン氏の言を参照すれば、今はまさに岐路と言えるのではないか。

 事実上の移民社会化に向かう可能性があるという現実を正面から捉え、オープンに議論すべき時だ――。この企画のベースにはそんな認識がある。

 だが移民問題を語るのは難しい。移民受け入れへの「賛成」「反対」どちらに立脚するかによって、同じ事象でも見方は大きく異なり、賛成であれ反対であれ、人は時に感情的になる。

 カウフマン氏は、ブレグジットを決めた国民投票の際、移民問題を重視した人々が、メディアなどを通じて得た移民に関する情報を基に「自分たちが住む地域の問題よりも、おのおのがイメージする国家像に沿って意思を決めた」と、傾向を指摘していた。メディアの役割は重要だ。

 外国人が増え、人口の1割を占める未来を念頭に、日本人にとっても外国人住民にとっても暮らしやすい社会をどう作っていくのか。冷静に考えることが問われている。【編集長補佐・服部正法】

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