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岩井俊二監督が突然訪れ…ドラマ「打ち上げ花火」撮影協力の釣具店

毎日新聞 / 2025年1月8日 10時15分

刑部岬の展望館から望む「打ち上げ花火」の舞台となった旧飯岡町=旭市で2024年12月16日午前10時38分、近藤卓資撮影

 千葉県の旧飯岡町(現旭市)と銚子市を舞台にした「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は1993年にテレビドラマとして放映され、2年後に映画化された。「小学生の駆け落ち」という意外性のあるストーリーに加え、美しい色調の映像が高い評価を得た。原作と脚本も担った岩井俊二監督の出世作で、テレビドラマとしては異例の「日本映画監督協会新人賞」を受賞。2017年にはアニメ版も上映され、旭市がロケツーリズム事業に乗り出す原動力になった人気作品だ。

 主演の山崎裕太さんが演じた「典道」の自宅シーンは、当時、町職員だった嶋田洋さん(77)、和子さん(73)夫妻が両親ら家族6人で暮らす釣具店兼住宅で撮影された。岩井監督が突然訪れ「イメージに合う」と、父親に頼み込んだ。

 家族は学校が夏休み中の約2週間、生活しながら撮影に協力した。夜の10時ごろまで撮影が続く日もあったが、根気よく演技を続ける子どもたちに嶋田さんは心を打たれた。「これほどの人気作品になるとは思わなかったが、町全体で協力しようという思いがあった」と当時を振り返る。

 ドラマや映画の放映後、夏場を中心にファンが嶋田さん宅を訪れるようになった。2階の子ども部屋の様子が変わっていないことに感激し、サイン帳への記載は約300人に達した。しかし、2011年の東日本大震災による津波で、嶋田さん宅は胸の高さまで浸水し、取り壊された。

 映画の学校のシーンは隣接する銚子市の市立豊岡小を使った。当時6年生だった嶋田高幹さん(43)はエキストラとして理科の炎色反応の実験の撮影に参加。セリフはなかったがヒロイン役の奧菜恵さんの隣に座った。休み時間に子役の男の子たちと、バスケの話しなどで盛り上がった。アニメ版の上映時には、映画版のDVDをレンタルして「出演したことを、子どもたちに自慢しました」と笑った。

 当時4年生だった勝山浩子さん(40)はトイレ近くの廊下を走る役だった。何回も取り直したが、実際に使われたのは一瞬だったという。奧菜さんについては「細くて、きゃしゃで、オーラがあった」。撮影後、芸能界に興味を持つようになった。東京の芸能プロダクションのオーデションを受け、合格したが、遠距離を理由に通うことはなかった。ロケのころから児童数の減少が続いていた同小は、21年に閉校した。

 少年たちが花火の形を確かめるために向かった刑部岬に立つ飯岡灯台には、打ち上げ花火の記念碑がある。手をかざすと、主題歌「Forever Friends(フォーエバー フレンズ)」の甘くせつないメロディーが流れる。映画の放映から30年を経た今も根強いファンが訪れ続けている。【近藤卓資】

   ◇

 旭市は、2005年に旧旭市、海上町、飯岡町、干潟町が合併して新たに誕生。南部は弓状の九十九里浜に面し、北部は「干潟八万石」と呼ばれる県内屈指の穀倉地帯が広がる。

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