ホワイトカラーからブルーカラーへ 変わる「移民」、問われる対応力
毎日新聞 / 2025年1月9日 11時30分
JR京浜東北線蕨駅の西口を出て10分ほど歩くと、高層階の建物が並ぶマンモス団地にたどり着く。埼玉県川口市芝園町の芝園団地は、多くの中国人が住んでいることから、近年は「チャイナ団地」とも呼ばれる。日本に住む外国人が増え、日本人にとっても外国人住民にとっても暮らしやすい社会をどう作っていくのか――。住民の6割が外国籍の芝園団地を取材し、3回にわたってリポートしてきた。その現状を踏まえ日本の「移民問題」の未来を、国立社会保障・人口問題研究所の是川夕・国際関係部長に聞いた。
日本ではこれまで、大卒ホワイトカラーの外国人労働者の社会的・経済的統合が進んできた。川口の中国人はその典型的な例と言える。
日本の労働市場に組み込まれており、社会内でステップアップしていくことができる。来日直後には、ゴミ出しの問題などで日本人とトラブルはあるだろうが、それも日本での生活に慣れるにつれてなくなり、それ以上の対立にはならない――こういった人たちが在日外国人労働者の主流だ。
移民問題を語る際、先に住んでいる住民との交流の無さが問題視されがちだが、日本人同士でもどれだけ交流があるかという視点も必要だ。新住民が集団で増えた場合、その集団に関する情報不足などから不安を抱く人が一定出たり、摩擦が起きたりする。これは外国人問題というより、都市問題と捉えるべきだ。
欧州では移民排斥の動きもあるが、日本では可能性は低いだろう。欧州の移民の多くは、植民地から来た人の子孫で長い歴史の中で下層社会を形成している場合がある。来日前にすでに雇用契約がある日本の外国人受け入れとは状況が根本的に違う。
(家族帯同で無期限就労が可能な)特定技能2号の拡大や(技能実習制度に代わる)育成就労の創設などを通じ、日本では永住も可能な形でのブルーカラーの外国人労働者の受け入れが本格的に始まる。
ブルーカラーの人たちは収入や教育面で、これまで受け入れの主流であった大卒ホワイトカラーの人より不利な場合も多い。ホワイトカラーほどに子供の教育にリソースを割けるかという問題があり、支援が必要になるだろう。自治体レベルでの統合政策が極めて重要になってくる。
従来は大卒ホワイトカラー人材が都市圏に集中していた。人口流出しか体験してこなかった地方の小さな自治体で、今後は外国人による人口増に直面する。そのときどう対応できるかが大きな課題だ。【聞き手・服部正法】
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