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阪神大震災から注目の関連死 専門家が「人災」と指摘する真意

毎日新聞 / 2025年1月13日 11時30分

能登半島地震から11カ月以上が過ぎても20人以上が身を寄せていた石川県珠洲市の市立大谷小中学校の避難所=2024年12月7日、滝川大貴撮影

 今月17日で阪神大震災の発生から30年を迎えます。当時、震災のストレスによる心筋梗塞(こうそく)などで亡くなる人が多く、「震災関連死」が初めて注目された災害でした。その後の災害現場で、足の血管に血栓(血の塊)ができる「エコノミークラス症候群」を防ぐ活動をしてきた榛沢和彦・新潟大特任教授(心臓血管外科)は「関連死は人災」と指摘します。その真意を尋ねました。

避難所の劣悪な環境が教訓

 ――阪神大震災で「震災関連死」という言葉が生まれ、兵庫県だけでも900人以上が肺炎やストレスによる心筋梗塞などで亡くなっています。

 ◆阪神大震災の時は長時間、体が圧迫されたため筋肉が壊死(えし)し毒素が全身に回る「クラッシュ症候群」や圧死などによる直接死が多かったのですが、後で振り返ってみると、救急搬送された被災者の中には肺炎がかなり多くいました。高齢者の衰弱や避難所での過酷な生活が原因の人がかなりいたことが分かってきたのだと思います。

 避難所は雑魚寝で寒く環境が悪かったことが教訓として見えてきました。肺炎や心筋梗塞は避難所では起きやすく、それは今でも変わっていません。

 ――2024年元日の能登半島地震では、関連死が死者数全体の半数を超えています。阪神大震災後の新潟県中越地震(04年)や東日本大震災(11年)、熊本地震(16年)でも関連死が減らないのはなぜでしょうか。

 ◆関連死は人災です。つまり、避けられた死で、避難所の環境がもっとよければ起きなかったのです。避難所がもっと暖かくて、広さがあって、ベッドがあれば亡くならなかったと思います。

 雑魚寝だと起き上がるのが面倒くさくなって寝たままの生活になります。動きが悪くなれば、飲食物や唾液などが呼吸の道に誤って入ることで起きる「誤嚥(ごえん)性肺炎」にもつながります。

 ――新潟県中越地震では、車中泊などで血栓が生じる「エコノミークラス症候群」をどう防ぐかが課題でした。

 ◆エコノミークラス症候群が多い避難所では、被災者の血圧が高かったり循環器疾患にかかっていたりしていました。

 予防するためにはベッドが必要です。ベッドは誤嚥性肺炎の予防にもつながるし、ベッドで個人のスペースを確保することになる。感染症を考えれば、ソーシャルディスタンスは必要です。

 ――能登半島地震の避難所や仮設住宅を見て、これまでとの変化を感じましたか。

 ◆前々からトイレのT、キッチンのK、ベッドのBのTKBを最低限きちんとやるべきだと主張してきました。能登半島北部のある避難所にベッドが入るようになったのですが、これは大きな前進で努力はされていると思います。

 ただ、入ってきたのは3週間以上たってからで、時間がかかってしまっていました。被災者自身が「ベッドを使いたくない」と訴えるなど、必要性が理解されていないこともあり、受け入れる側に準備ができていない部分があったように思います。

 仮設住宅は、よくなっていました。二重サッシになっていて、結露対策も考えられていました。玄関を開けるとすぐ部屋というような昔のタイプの間取りもなくなってきた印象があります。その影響で、仮設住宅では血栓も少なかったです。

 ところが、昨年11月下旬に石川県珠洲(すず)市の仮設住宅に行った時、高い割合で血栓が見つかりました。9月の能登豪雨で仮設住宅が浸水し、一時避難所に身を寄せていた被災者でした。

 結局、避難所の環境がよくないんです。避難所を2回経験した人に血栓が多いという状況でした。【聞き手・塩路佳子】

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