養護施設出身の20歳を祝う 振り袖やはかま貸し出し、記念撮影も
毎日新聞 / 2025年1月11日 10時15分
奈良市の一般社団法人「はなまる」(飯村有加代表)が、新たに20歳を迎えるケアリーバー(児童養護施設や里親家庭を離れた人)を支援しようと、振り袖やはかまを無料で貸して撮影している。着付けやメーク、撮影はプロが担う。飯村代表は「『周囲の大人たちは見守っているからね』とメッセージを送りたい」と話す。
振り袖撮影は同市の写真家、中尾あづささん(50)が2024年2月に始めた。はなまるは同4月、この取り組みに賛同し、以後は共同で実施している。こども家庭庁の24年度「こどもの未来応援基金」に採択され、これまで3人を撮影している。
「カメラに向かって笑ってみて」「とてもきれいで、良い表情だよ」。昨年5月に20歳になった県内在住の女性は、中尾さんの声掛けに応じ、はにかみながら笑う。同12月29日、奈良公園周辺での記念撮影の一場面だ。
着付けやヘアメークなどを終えて約1時間、公園内を歩き、着物に合う場所で立ち止まって撮影。女性は「振り袖を着るのもプロによるメークや撮影も初めて。日本文化を象徴する格好で出歩けてうれしい」と感激していた。以前撮影した女性たちからは「諦めていた振り袖撮影を実現させてもらえてうれしい」「着付け費用に悩んでいたので、支援してもらえて助かりました」などの感謝の言葉に加え「これから精進します」と前向きな言葉も寄せられる。
養護施設(ケア)を離れた(リーバー)若者は、親など頼れる大人がいなくなり、社会的に孤立するケースも少なくない。中尾さんは「経済的な理由で振り袖を着ることを断念した人に自分らしさが輝く瞬間を体験してほしい」と話す。
中尾さんは17年前から出産の立ち会い撮影を行っているが、幼少期から施設で育った19歳(当時)の妊婦と4年前に出会ったのを機に「彼女と子どもの成長を記録していきたい」と思うようになった。その後は誕生日や20歳を祝う会など節目の場面で、この親子の撮影と支援を続けている。
施設を出た若者について「誰にも頼らずに生きなければならないという意識を強く持ち、頼ることに慣れていないと感じる」という。「しんどい時はみんな誰かに頼って生きている。20歳の記念撮影の体験を通じ『困った時は必ず応援してくれる誰かがいる』ことを感じてもらいたい」と支援する理由を語る。【山口起儀】
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