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教育費5万円増で1000万円控除の例も 賃上げ税制、いびつな実態

毎日新聞 / 2025年1月15日 17時0分

会計検査院=東京都千代田区で、柴沼均撮影

 社員の教育費を年間5万円増やしただけで法人税を1000万円控除――。賃上げ促進税制の一環として導入された法人税の減税措置を巡り、会計検査院は15日、いびつな控除の実態を明らかにした。控除額の計算方法が一般的な減税とは異なる点を要因に指摘。「課税の公平原則から逸脱した措置だ」としている。

 賃上げ促進税制は、社員の給与増を達成した企業を税制面で優遇するために国が導入。検査院が今回調べた減税措置は、給与に加えて、社員研修などの教育訓練費を増額させた大企業や中小企業に適用される。

 中小企業の場合、①給与を前年比1・5%以上増②教育訓練費を前年比10%以上増など――が適用要件となり、控除率は①で15%、②も達成すると「10%上乗せ」されて25%となる仕組み。控除額は給与増額分に控除率を掛けて計算する。

 ある中小企業は2018年度、この減税措置で法人税約2600万円を控除された。内訳は①で約1600万円、②でさらに約1000万円。ただし②については、教育訓練費を前年の25万円から30万円に増やしただけで達成していた。つまり5万円の支出で、その200倍もの減税を受けた計算となる。

 検査院によると、控除額が関連支出を上回ることはなく、例えば設備投資が控除の要件なら、1000万円の支出に対し控除額はその7%相当、70万円といったケースが一般的とされる。一方で「上乗せ」の控除額は、実際の支出である教育訓練費ではなく給与の増額分を基に計算。関連支出と控除額の計算根拠が異なり「他に例がない仕組み」(財務省)という。

 検査院によると、18~21年度に「上乗せ」控除を活用した延べ1万2861法人のうち8割近い9812法人が、教育訓練費の増額分を上回る額の法人税を控除され、超過額は計214億円に上った。

 検査院の担当者は「要件(となる関連支出)を上回る控除が想定される時点で、課税の公平原則から外れた措置と言える。国民が納得できるだけの賃上げ効果があったのか、きちんと検証すべきだ」と指摘した。

 「上乗せ」控除は26年度までの特別措置として18年度に導入され、財務省は「期限が定められた税制であり、次の改正時にどういう適用実態があったか検証する。延長する場合は見直すべきところは見直す」としている。【渡辺暢】

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