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犬の鳴き声、ふん不始末…東京23区に苦情・相談、年3000件超

毎日新聞 / 2025年1月22日 6時0分

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 ふんや尿の不始末、鳴き声がうるさい……。

 東京23区では、飼い犬に関するこんな苦情が年3000件超にのぼることが毎日新聞の集計で明らかになった。ただ、行政による問題の根本的な解決は難しいという。

コロナ禍で犬を飼う人が増える

 厚生労働省の統計によると、2024年3月時点で、登録されている犬は全国で計605万4519匹。都道府県別では、東京都が全体の9%にあたる54万8935匹で最も多い。

 毎日新聞は都内人口の7割を占める23区に、19~23年度に寄せられた苦情・相談について尋ねた。

 犬と猫を分類していない品川、大田の2区を除く21区では、犬のふんや尿の不始末、「鳴き声がうるさい」といった内容が大半を占めた。

 年度別でみると、19年度3012件▽20年度3983件▽21年度3152件▽22年度3427件▽23年度3760件――となっており、増加傾向にある。

 背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の影響があるとみられる。

 一般社団法人「ペットフード協会」の推計によると、全国で19年に35万匹だった犬の新規飼育数は、コロナ禍の20年は41万6000匹に増加。その後も40万匹前後で推移している。

 千代田区の担当者は「在宅勤務の普及で、家にいる時間が長くなった人が増えた。また、犬を飼う人も増えた。このため、鳴き声などが以前よりも、気になりやすい状況になっているのでは」と話す。

「睡眠障害」を訴える内容も

 23年末に「動物愛護と近所トラブル」をテーマにしたシンポジウムを開いた目黒区では23年度に166件、24年度は上半期だけで118件の苦情・相談があった。

 ペットのふんや尿の不始末は、軽犯罪法違反や「ポイ捨て」を禁じる区条例違反にあたる可能性がある。

 ただ、寄せられた情報から飼い主を特定できるケースは限られるという。

 生活衛生課の担当者は「行政から飼い主に改善を求めることで、飼い主と苦情の通報者がもめる可能性があり、踏み込んだ対応が取りにくい」と明かす。

 苦情・相談の半分を占める鳴き声では、「睡眠障害になった」との深刻な内容もある。

 どう対処したらいいのか。

 東京弁護士会公害・環境特別委員会に所属する半田虎生(とらい)弁護士によると、鳴き声を騒音とみなし、飼い主に無駄ぼえをさせず、大声で鳴かないしつけを義務づけた判例があるという。

 環境省が示す環境基準は、人の健康を保つためには、一般的な住宅地域で昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下の音の大きさが望ましいとしている。

 犬の鳴き声は、ピアノ演奏や掃除機の使用を上回る88~100デシベルともされる。

 とはいえ、騒音とみなされる基準は、社会生活を送る上での受忍限度(我慢すべき程度)を超えるかどうか、がポイントになる。断続的に鳴りやまない状態などが該当するという。

 半田弁護士は「どのような場合が特にうるさいのかなど、飼い主にはできる限り具体的に伝えて、対策を講じられる形で申し入れるべきです」と説く。

 面と向かって話しづらければ、手紙を渡したり、弁護士を介したりする手法を挙げる。

 飼い主も犬の鳴き声に困っている場合がある。

 車が通る時、散歩に行けないストレスがたまっている時……。ほえる原因はさまざまだ。

 半田弁護士は飼い主に対して、周辺住民の状況を把握したうえでトラブルになる事態を考慮し、「苦情を言われた場合は、感情的にならず、日時や内容をメモして、可能な範囲で対処することが重要です」と話す。

 日本で飼われている犬と猫は計1600万匹に迫ると推計され、15歳以下の子どもの人口を上回る。

 半田弁護士はこう、アドバイスする。

 「ペットと人との関係は『極めて重要』とした判例もあります。犬の鳴き声が環境基準を超えたから、直ちに違法、とはなりません。飼い主と近隣住民が適切に情報を共有し、ペットと人が共存するすべを話し合うことが大事です」【まとめ・宮城裕也】

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