牛乳パックを再生プラスチックに ラミネート部分も生かす技術開発
毎日新聞 / 2025年1月16日 14時30分
牛乳などの紙パック(ラミネート紙)はリサイクルの際にラミネート部分のプラスチックを取り除いているが、環境に配慮して紙パックをすべて生かし、再生プラスチック原料にする技術を、紙の一大産地・愛媛県四国中央市の産官学組織が共同開発した。2024年度の同県ゼロカーボン・ビジネスモデル創出事業に選ばれており、二酸化炭素削減への着実な一歩として注目される。
同市にある愛媛県紙産業技術センター▽愛媛大学紙産業イノベーションセンター▽古紙再生パルプ製造販売業「AIPA(アイパ)」――の3者は、古紙パルプの繊維の働きでプラスチックの強度を増す技術を既に開発し、共同実施体の「鈴木樹脂工業」(同県新居浜市)が成形を行っている。
今回、その技術をラミネート紙に応用した。まずラミネート紙をそのまま細かく粉砕する。次に少量の薬剤を加えて加熱することで、プラスチックになじみやすく、配合が容易な「プラスチック添加剤」に再生させることが特徴だ。ここで生まれたプラスチック添加剤は原材料のままパルプが約8割を占めるが、これを別のプラスチック素材と混練機で均一に混ぜ合わせてプラスチックの割合を増やし、再生プラスチック素材として製品化することができる。
現在、飲料などの紙パックは国内で年に200万トンあまりが生産され、約80万トンは再生紙になるとされる。この場合、素材の約8割を占める紙の部分は再溶解後、トイレットペーパーなどに再生されるが、約2割のラミネート部分(プラスチック)は産業廃棄物として焼却され、二酸化炭素の発生源となっている。
アイパは15日、紙パックをまるごと原料としたプラスチック製カードケースの試作に成功した。29日から東京で開かれる「新機能性材料展2025」(加工技術研究会など主催)に出展し、二酸化炭素削減のビジネスモデルとしてPRすることにしている。同社は今回のビジネスモデルが全県的に広がった場合、年約3万1000トンの二酸化炭素排出削減につながると試算している。
再生技術に携わってきたアイパの神原聖史(まさふみ)マーケティング部課長は「従来のプラスチックに置き換えてさまざまな製品を生み出すことができる。環境に大きく貢献できるビジネスモデルとして育てたい」と話している。【松倉展人】
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