1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

阪神大震災30年、灘高生だった福島大准教授の思い

毎日新聞 / 2025年1月16日 16時50分

「大災害はどこでも起こり得るというのが阪神大震災の教訓です」と語る前川直哉・福島大准教授=福島市金谷川の同大で2025年1月15日午後2時33分、錦織祐一撮影

 6434人が犠牲になった阪神大震災から17日で30年。当時、兵庫県尼崎市で被災した前川直哉・福島大准教授(47)=教育学=は、東日本大震災を機に福島市に移住し、復興途上の子どもたちの教育や、東京電力福島第1原発事故も重なる未曽有の複合災害となった被災地での体験や教訓の継承に取り組んでいる。その思いとは。

 前川さんは灘高校(神戸市東灘区)3年だった1995年1月17日、尼崎の自宅マンションで被災した。両親が営む喫茶店は半壊。高校の体育館は遺体安置所になり、授業は卒業まで行われなかった。大学入試センター試験(大学入学共通テストの前身)の2日後。進学への不安が募ったが、担任教諭に電話で「形あるものは壊れるが、学んだものはなくならない。学ぶことが復興につながる」と励まされた。東京大に現役合格。教育学部を卒業後、母校の教諭となり、日本史を担当した。

転機は東日本大震災

 ただ、当時は「震災の体験を話すことはなかった。やっぱり思い出したくなかったですから」と明かす。転機は2011年3月の東日本大震災だった。阪神での全国からの支援を思い出し、夏休みに岩手県釜石市に同僚と災害ボランティアに入った。生徒たちに話すと「自分たちも現地に行きたい」。引率して被災地に足しげく通ううちに原発事故に苦しむ福島への思いが募り、教え子の卒業を見届けて14年に移住した。

 一般社団法人「ふくしま学びのネットワーク」を設立して中高生の学びをサポート。県が16年度から取り組む教育旅行プログラム「ホープツーリズム」にも企画段階から関わり、被災地の現状の発信に努めた。18年からは福島大で教べんを執る。近現代日本の男性同性愛の歴史を研究し、24年にはNHK連続テレビ小説「虎に翼」のジェンダー・セクシュアリティー考証を引き受けた。

 「福島の原発の電気は首都圏のために使われた。事故がなぜ発生したのか、どうすれば復興できるのかは、福島だけでなく日本全体で考えなければいけないことです」

 阪神大震災から30年。東日本大震災からは3月で14年となり、震災体験の風化が懸念されている。前川さんは「震災を知らない世代が増えるので当然」とした上で「むしろ、経験をしたことのない人に伝えることが大事。なるべくたくさんのことを見て、人に会い、現場を歩いてもらうべきだ」と指摘する。

 広島と長崎が被爆80年を迎えるのを前に24年、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞した。「被爆者の方々もそうですが、戦争や災害を経験した人はどうしても減ってしまう。その時に、体験や教訓を普遍化する、つまり何も知らない人に伝えることで人類は進化してきた。現代は、まさに人類が試されています」

「防災大国に」

 阪神大震災の最大の教訓は「兵庫は地震が少ないと思われていた。大災害はどこでも起こり得ると示した」ことだと考えている。24年元日には能登半島地震が発生。石破茂首相は「防災庁」の新設を目指している。「災害が起きていないことは、実はすごく幸運なことだと発想を転換して、『災害大国』を、特にソフト面で世界で一番詳しい『防災大国』にしないといけません」【錦織祐一】

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください