「がれき撤去で最低15年」 ガザ停戦合意、難民支援NPO代表の憂い
毎日新聞 / 2025年1月16日 19時15分
2023年10月から戦闘を続けてきたイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとの停戦合意。日本の支援団体や被爆者たちは合意が恒久的な停戦につながり、平和が訪れることを願った。
ガザで30年以上にわたり難民支援を続けているNPO「パレスチナ子どものキャンペーン」(東京都新宿区)エルサレム事務所代表の手島正之さん(51)は停戦合意について「爆撃による物理的、身体的な被害がひとまず止まることは良かった。だが、ここまで時間がかかり、犠牲が拡大したことを思うとやりきれない」と語った。その上で「合意がどの程度守られるか注視していきたい。さまざまな要素に左右されるから、しっかり履行されるとは正直信じられない。五分五分ではないか」と指摘した。
これまで避難民はガザ中部や南部の狭いエリアに押し込まれていた。停戦合意で北部への住民の帰還も認められることから、NPOが支援する範囲も広がると予想される。この点、手島さんは「現地で支援に従事してくれる人や資材を増やさなければならない」と話す。1日あたりトラック600台分の人道支援物資搬入も約束されたが、「現実に入ってくるかは未知数だ。入ってこなければ、物資の在庫がある業者や小売店などを探さなければならないだろう」とみる。
戦闘が残した傷痕の大きさについては「ガザのがれきを撤去するだけでも最低15年はかかると言われている。社会インフラのみならず人間の尊厳も破壊された。人々の生活は最低レベルに戻るだけで、今後も人道危機は続く」と強調した。
広島市で被爆し、国内外で証言活動をしてきた森下弘(ひろむ)さん(94)は「ガザで多くの子どもが犠牲になっていたので一安心した。ただし、これが継続的、恒久的なものになるようにつなげないといけない」と話した。23年8月、イスラエルやパレスチナ、日本の若者が広島市で交流するイベントに招かれ、証言した。「お互いに憎しみ合うことをやめたいけれど、すぐには難しいという葛藤を感じた。戦争を終わらせるために若者たちに頑張ってほしい」と期待を込めた。長崎県平和運動センター被爆者連絡協議会議長で被爆者の川野浩一さん(85)は「良かったが、これが単に一時的な合意で終わらないかが心配だ。恒久的に続けていく努力を、国連が中心となって率いていってほしい」と語った。【伊藤一博、尾形有菜、武市智菜実】
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