年内入試、いまや5割以上 「大学受験は中長期的に捉えて」
毎日新聞 / 2025年1月17日 14時30分
約49万人が出願した大学入学共通テストが18、19の両日に迫り、年明けとともに受験シーズンが本格化する。しかし、受験生が参考書と向き合う、この時期ならではの光景は「今は昔」かもしれない。5割以上が年越し前の「年内入試」ですでに進学先を決めているからだ。
少子化時代に学生を確保したい大学と早い時期に合格を決めたい受験生の思惑が一致した形だが、大学入試の早期化は新たな課題を突きつけている。【真貝恒平】
年内入試は、小論文などで受験生を評価する「総合型選抜」(旧AO入試)と、高校の成績や推薦書などで判断する「学校推薦型選抜」(旧推薦入試)に大別される。通信教育大手「ベネッセコーポレーション」(岡山市)が文部科学省の調査を基に分析したところ、2023年度の年内入試は全体で51・4%、私大に限ると59・7%に上る。
「大学が年内入試を増やしたいのは、入学者数の充足のためにも有効な選抜方式なので、今後もさらに拡大するでしょう」。こう話すのは愛知大(名古屋市東区)入試課の後藤憲浩さん(45)だ。大学職員として学生のキャリア支援に携わり、入試課に配属後はセミナーや高校で、主に受験生を対象とした講演を行っている。
年内入試は早ければ9月に始まる。高校生が大学生活に触れるオープンキャンパスはたいてい夏に行っているが、愛知大のオープンキャンパスでは参加者数が高校3年生より2年生の方が多かったという。
24年は東洋大(東京)が新たに導入する「学校推薦入試基礎学力テスト型」が注目を集めた。学校長の推薦があれば出願でき、既卒生も可。試験科目は英語と国語または数学の2教科2科目のみ。12月1日に実施され、他大学や東洋大の一般選抜との併願も可能だ。後藤さんは「知名度の高い大学が選抜方式のバリエーションを増やすことは受験そのものを変化させることもありえるので社会的影響は大きい」と説明する。
大学受験は年内入試に一般選抜を加えれば、3回のチャンスが受験生には与えられる。後藤さんは「受験生にとって選択肢が増える」と評価するが、「年内に進路が決まる生徒と、翌年2月の一般選抜まで頑張る生徒の間で受験勉強に対する姿勢の違いが生じてしまうこともある」と指摘。大学進学後、年内入試と一般選抜で合格した学生を比べると、成績に差が出てしまうケースもあるという。
そこで後藤さんが高校の講演などで生徒に何度も呼びかけるのが、「受験がゴールではなく、最後まで頑張ることが大事」という言葉だ。「大学に入ることが目標ではなく、最後まで諦めないことを受験勉強で学んでほしいし、一生懸命に努力することは就職活動や今後の人生などで将来必ず報われる」と力を込める。
18歳人口が減少し続け、大学入学志願者と大学入学定員が同数で、志望する大学を選ばなければ入学できる「大学全入時代」が到来したといわれる今、後藤さんは講演などを通して受験生にエールを送り続けている。「年内入試で入学者の半数以上が決まり、一般選抜で勝負することにプレッシャーを感じると思うが、受験生には大学入試を受験という限られた狭い視野ではなく、就職や将来の人生設計といった中長期的なキャリアとして捉えてもらうよう心がけています」と強調する。
大学入試センターによると、今年の大学入学共通テストの確定出願者数が前回から3257人増えて49万5171人で、増加は7年ぶりとなる。
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