田沼意次の「お国入り」文書発見 「べらぼう」に合わせて展示へ
毎日新聞 / 2025年1月21日 9時49分
江戸幕府中期の老中で遠州相良藩(現在の静岡県牧之原市)の藩主、田沼意次(おきつぐ)が「お国入り」した際の行動を記した文書が牧之原市内の旧家から見つかった。田沼家の位牌(いはい)をまつる平田(へいでん)寺に参拝したことなどが初めて確認された。放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に合わせて26日から市史料館で開催される「田沼意次の新時代展」で展示される。【藤倉聡子】
田沼意次は1719年、旗本の息子として江戸で生まれた。将軍の側近から出世して大名となり、58年に遠州相良の領地を与えられると、養蚕や桑、漆木などの栽培を奨励して殖産興業に務めた。80年に完成した相良城の見分と領内視察のため、同年4月13~23日に相良を訪れた。記録上では、お国入りはこの1回のみとされており、これまで日ごとの行動は不明だった。
発見された史料は、庄屋の矢部六郎右衛門が記した「安永九年 御地頭様御入国萬覚(よろずおぼえ)」。昨年3月、新時代展の開催準備中に市内の旧家から調査を依頼された古文書の中から見つかった。領民の代表役の庄屋が、後々の参考になればと書いたとみられる。道案内をしたことや、供の人々を含めて500人に及ぶ一行の食事や待機場所を用意したことなどが記されているという。
縦17センチ、横12・4センチの12枚の紙の両面に、メモがつづられている。4月13日に相良城に入城したことに続いて、14日に大江八幡宮と平田寺に参拝し、夕飯後に現在の波津公園周辺から浜へ出て、引網を見学したことなどが記されている。市教育文化部大河ドラマ活用推進室によると、これまでの研究では相良領滞在中に視察した大まかな場所しか分かっておらず、日ごとの行程や意次の具体的な行動は不明だった。
平田寺は田沼家代々の位牌(いはい)をまつる寺として、意次が本堂を再建するなど手厚く保護されたが、実際に参拝したことが確認されたのは初めて。引網を見に行くなど、産業振興に尽力した意次らしいエピソードも興味深い。史料は14日についての記述で終わっており、同推進室は「さらに続きもあるのではないか」と期待している。史料が公開される「田沼意次の新時代展」は26日~2026年1月12日、市史料館で開催される。
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