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京都の路地に「いけず石」 どこに?なぜ? 京大研究者が探る謎

毎日新聞 / 2025年1月25日 7時0分

コンクリートで地面に固められた「いけず石」=京都市上京区で2024年12月6日、久保聡撮影

 京都では、大通りから入った路地の曲がり角の隅に大きな石がよく置かれている。地元では「いけず石」とも呼ばれる。なぜ置かれるようになったのか、そもそもどうしてここにあるのか? そんな素朴な疑問を解き明かそうと、大学と民間企業による共同研究が始まった。

 研究は京都大大学院文学研究科の埴淵知哉(はにぶちともや)准教授(都市地理学)のチームが、2024年10月中旬にスタートさせた。埴淵准教授は元々、歩きやすいまちづくりと健康との関係などをさまざまなデータを基に研究している。日常にある物事を数値化し、地図に落とし込んで表現することで、捉えにくい「地域らしさ」を可視化している。

 そんな中、京都で日常の風景ともなっている「いけず石」に目を付けた。いけずとは「意地悪」を意味する関西の方言だ。

 大阪府などでもいけず石は見られるが、碁盤の目のような街路で形成された京都市内は特に多いとされる。大きさや形はさまざまだ。中には、コンクリートで地面に固定されたものもある。車などから家屋を守るため、車の普及と比例して置かれるようになったとされるが、分布には偏りもあり、詳しい歴史、経緯は分かっていない。

京都らしさの一端を

 埴淵准教授は研究の狙いについて、「どこにあるか。なぜそこにあるのか。路地の幅だけでなく、近所づきあいや地域の風習など京都らしさと関連しているかもしれず、その一端を描き出したい」と説明する。

 研究は、市民らも一緒に参加して調査する「シチズンサイエンス」の形を取った。この手法では、従来では得られなかった膨大なデータを収集できる。近年では科学の発展にも寄与している。

 今回の取り組みでは、デジタル地図を手掛ける「ジオテクノロジーズ」(東京都)と協力し、同社が提供するアプリ「GeoQuest(通称・ジオクエ)」を活用した。

 ジオクエでは、所定のテーマの写真を利用者がスマートフォンなどで撮影し、投稿すると、デジタルギフトなどがもらえるポイントが付与される。より多くの利用者が積極的に参加し、研究に必要なデータを広範囲に大量収集できるのが特徴だ。

「調べて何になる?」

 今回は、市中心部の上京、中京、下京の3区にある交差点約4800カ所を対象に、いけず石の写真を撮影・投稿してもらうよう、24年10月からジオクエを通じて募集した。締め切りの同年12月末までに、ほぼ全ての交差点の角を収めた写真が集まった。

 研究チームは今後、石の有無や位置情報などが分かる大量の写真データを基に、まずは分布状況を地図として表示する。住宅の密集具合や道幅、一方通行など街路の特性と、石の設置との関連性を分析する。さらに多く置かれている地域には、埴淵准教授が学生らと直接訪れて、住民に設置の経緯や目的などを聞き取る予定だ。

 「調べて何になるの?」と思う題材に目を向けることも、地域への豊かな見方を得る上で重要だとする埴淵准教授。「地域らしさの可視化は、地域の個性や魅力を発見する機会にもなる。市民の地域への関心や愛着を高め、生活の質の向上にもつながる視点を発見したい」と意気込んでいる。【久保聡】

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