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徳島県教委、ラーケーション導入へ 4月以降、県立47学校で

毎日新聞 / 2025年1月25日 9時15分

愛知県教委が「ラーケーション」を導入した2023年度に実施したアンケートの回答=2025年1月20日午後4時37分、植松晃一撮影

 同級生が教室で授業を受けている平日に、学校を休んで保護者らと過ごすのは、少しためらう子どもたちもいるかもしれない。でも、学校も認めた学びや体験に結び付き、「欠席」扱いとならないなら……。徳島県教育委員会が4月以降、県立学校47校で「ラーケーションの日」という取り組みを始める。

 「ラーケーションの日」は「ラーニング(学び)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語だ。自動車関連を含め製造業が盛んで週末に働く人が多いとされる愛知県で、県教委が2023年9月に初導入した。愛知県では県立学校に加え、市町村が運営する小中学校でも、ほぼ同時期に制度が始まった。徳島県教委によると、25年初めの時点で、全国9自治体が導入し、都道府県では、愛知県に加え、茨城、熊本、山口の各県が実施している。上限日数は自治体によって年3~5日だ。

 徳島では、県立高校や県立中学校などが今年4月以降、生徒に定期試験といった学校行事の時期を示す。各家庭では、学校行事の時期を外し、日時や活動場所、活動内容などを記載した計画書をあらかじめ学校に届ける。年最大3日で、バラバラでも、連続での取得も可能という。外出もOKで、家庭事情によっては、祖父母や成年のきょうだいと過ごす計画も対象となる。忌引などと同じ扱いで、欠席とならないが、休んだ授業について補修は原則なく、自習などで補う必要がある。

 サービス業などに従事し、週末に休みにくい保護者らに子どもと過ごす時間を持ってもらうのが狙いだ。学びや活動の一例として、担当者は山や川、海で過ごす自然体験のほか、気になる場所の歴史や文化、食に触れる地域巡り、興味があることに取り組んで将来の進路選択の参考にする社会体験などを挙げる。

 県教委は、小中学校を運営する市町村教委にも導入を期待しており、24年11月には導入方針と制度概要を説明したという。

先行の愛知県、現状と課題は

 「ラーケーションの日」を導入すると、何が変わるのか。2023年の2学期から全国で初めて導入し、徳島県教委が参考とする愛知県教委は、実施から約4カ月を経た24年1、2月にインターネットでアンケートを実施した。

 すると、教職員からは、出欠の把握・記録など事務が煩雑になったという意見も出た。例えば、「ラーケーションの日」として子どもが休むと、出欠管理の事務が増える。また、給食のある小中学校では、子どもが休むと、人数に合わせた食材の発注に加え、給食費の精算時に出欠を反映させるといった事務作業が生じる。

 ただ、愛知県教委は教職員の負担増になる事務増大を当初から想定し、対応策として、校務支援員といったスタッフを各学校現場に配置できる財政的な手立てを講じていた。

 小中学校の場合、23年度は1校当たり年間100万円、24年度は年間200万円を上限に、県費でスタッフを雇えるようにした。モデル事業との位置付けなので、全市町村ではないが、政令市である名古屋市を除く県内53市町村のうち、23年度は18市町、24年度は35市町村で、財政措置がなされた。

 校務支援員の人選は市町村の教委や校長に委ねたが、非常勤講師を校務支援員として確保した例もあった。非常勤講師に事務処理を担ってもらったり、授業を肩代わりしてもらい、手のすいた教員が事務処理に当たったりしたという。非常勤講師を確保した学校では、授業を委ね、子どもを持つ教員が「ラーケーションの日」のために有給休暇を取った例も多かったという。

 その結果、校務支援員などが配置された市町村立学校314校のうち、約94%が「有効」と評価した。県立学校でも、増大する事務作業を想定し、週29時間を上限に校務支援員などの人件費を県費負担する制度がある。

 だが、4月から導入する徳島県教委に増加事務への対策計画は無い。県生涯学習課の担当者は「出欠管理に加え、小中学校なら給食関係などで手間や負担が出てくるという認識はある。『先進事例を踏まえなければ』という思いもあるが、まずは運用してみて、(学校現場と)問題点を共有させてほしいと言っている」と、当面は様子見とも取れる姿勢だ。

 県教委の方針に対し、県立高校で教壇に立つ男性は「教育現場は今でも多忙で、愛知県のような対応が取られないと、(新たに生じる)仕事が教職員に付加されて大変な状況になるのでないか」と心配している。

 先行県である愛知県では、事務量増大を想定し、校務支援員確保を念頭に置いた財政措置を取るなど一定の手立てを講じたうえで実施した。愛知県との財政状況の差異はあるにしても、先行自治体の経験を生かし、より完成度の高い制度で取り組める立場にある徳島県教委が無策のまま、「ラーケーションの日」を始める形となる。

 徳島県では、学校現場での教職員の多忙さを緩和するため、保護者との連絡手段をデジタル化したり、勤務時間外に留守番電話を設定したりといった教員の働き方改革を進めている。それでも、県立学校教員の月平均時間外在校時間は、23年度に22年度比で0・7時間増加した。「ラーケーションの日」開始で確実視される事務増に無策のままで臨むと、学校現場での取り組みに逆行する結果になりかねない状況だ。【植松晃一】

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