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書店もスーパーも撤退 復活望む声に、町が目を付けた「ローソン」

毎日新聞 / 2025年1月24日 13時10分

ローソン立山町役場店の店内に並んだ書架=富山県立山町で、浜名晋一撮影

 「デパートや本屋などができればよいと思います」。2015年に富山県立山町から書店が無くなった直後、町長宛てに10歳の女児から投書が届いた。同様の声は子どもだけではなく、さまざまな年齢層の町民から寄せられたという。町はこれを受け、コンビニチェーン「ローソン」を誘致。24年4月、「LAWSONマチの本屋さん」を併設したローソン立山町役場店がオープンした。

 郊外型の大型書店の出店や、インターネット通販での書籍購入の一般化を背景に「街の本屋さん」が全国で次々と姿を消している。同町も例外ではなく、最盛期には中心部の町役場付近だけでも3軒の書店があったが、時代の流れにはあらがえなかった。

 町は当初、町役場に近い富山地鉄五百石駅前に書店を開いてもらおうと空き店舗を用意し、出店希望者を募った。だが応募はゼロ。22年には中心市街地のスーパーも閉店したことから、コンビニに着目し、「LAWSONマチの本屋さん」の出店にこぎ着けた。

 ローソンによると、このサービスは「コンビニの買い物客に本を手に取ってほしい」と21年にスタートした事業で、現在は全国で13店舗を展開する。立山町も同社との間で包括連携協定を結び、町が敷地を提供したほか、建設費も負担した。

 町役場の敷地内に建てられた店舗に一歩足を踏み入れると、コンビニのスペースに隣り合う形で数多くの書架が並んでいるのが目に入る。約60平方メートルのコーナーに、雑誌や新書、文庫本など約4000点。とりわけ、絵本や図鑑などの児童書を約440点取りそろえた。郊外型書店やオンラインでの購入が不便な子どもを対象とした本を充実させてほしいとの町の要望を受けたものだ。

 誘致に奔走した同町企画政策課の中川大輔さん(51)は学生時代、町内にあった書店をハシゴするのが好きだった。町民からは「車で出かけなくても本が買える」「孫への贈り物に本を選ぶことができる」と開店を喜ぶ声が寄せられているという。店内で本を物色していた富山市の男性会社員(37)は「電子書籍もいいが、やはり街には本屋があった方がいい」と語った。

 私の実家は昭和40年代の一時期、大阪郊外にある町の駅前商店街で書店を営んでいた。小規模ながらも文学や哲学の全集など硬派な本を取りそろえ、父親は地域の活字文化を支えているという自負があったようだ。そんな子ども時代の記憶があるだけに「街の本屋さん」の復活は私もうれしい。

 立山町役場店では本を注文する客も多く、24年11月からは町立立山図書館への納入も始めた。波及効果の有無は不明だが、近くには新たに古書店もできたという。「本屋に立ち寄る人が増えれば、そこを拠点に街ににぎわいが戻ってくる」。中川さんは期待を込めて語った。【浜名晋一】

地域コーナーも設置

 ローソン立山町役場店は富山県立山町前沢2445。営業時間は午前6時~午後10時。併設する「LAWSONマチの本屋さん」には、地域に関する書籍を集めたコーナー「たてやまの本棚」も設けている。

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