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石川にグリーンランド?現地の岩石で大庭園 背景に「北陸の偉人」

毎日新聞 / 2025年1月26日 18時8分

冬の光を浴びる「中谷宇吉郎 雪の科学館」。雪の結晶をイメージした六角形の塔が建ち並ぶ=2025年1月23日午後0時半ごろ、石川県加賀市で竹中拓実撮影

 トランプ米大統領が獲得に意欲を示して物議を醸し、にわかに世界的に関心が高まっているデンマーク領グリーンランド。この世界最大の島の岩石で造られた大庭園が石川県加賀市にある。地元以外では意外と知られていない「北陸の偉人」と「雪と氷の島」の関係は――。

 庭園があるのは、県南部、柴山潟の湖畔に建つ「中谷(なかや)宇吉郎 雪の科学館」(加賀市潮津町)。中庭は、北緯78度の極寒の地から運ばれた特徴的な岩石が敷き詰められ、1日9回、人工的な霧が噴出し、幻想的な光景が広がる。

 中谷は明治時代の1900年、同館近くで生まれた。雪の結晶の研究などで知られ、「雪氷学」の確立者とされる。科学者の視点で世相も切る随筆の書き手としても著名で、「雪は天からの手紙」は名言として広まった。

 第二次世界大戦前から世界的権威として知られた中谷は戦後、グリーンランドを研究の舞台に選び、57年から62年に亡くなるまでの間、度々現地を訪れ、長期滞在した。

 米軍基地がある島北部チューレ付近で生き抜く工夫など、同館には研究の苦労を伝える展示もある。現地を知ってもらおうと造られたのが中庭だ。敷き詰められた岩石は60トンにも及ぶ。

 94年の開館前から準備に関わった神田健三・元館長(76)は「岩石が届いたのは開館直前。クレーンで15トンずつ中庭に降ろした」と当時の工夫を語る。

 デンマークとグリーンランド自治政府の協力も大きかった。岩石採集だけでなく、付着した細菌を持ち込ませぬよう防疫のための洗浄、輸送費負担など全面的に協力してくれたという。神田さんは「宇吉郎が現地で研究に打ち込んだことが覚えられていた。中庭に並べる時は、現地の状態を再現するよう努めた」と振り返る。

 世界的に珍しい存在で、友好の印となっている大庭園。だが、1年前の能登半島地震で館周辺もひび割れなど大きな被害を受けた。4月から1年ほど休館して修繕する予定だ。

 館内では、雪や氷にまつわる実験などが楽しめる。石川真知子学芸員は「新幹線延伸開業の影響か今年度はインバウンド客が増えました。最近は来館者が『あのトランプ大統領の……』と会話する声をよく聞きます」と語り、3月末までの来館を呼び掛けた。【竹中拓実】

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