鴻池運輸支店の元課長、架空発注で会社に損害か 特別背任容疑で逮捕
毎日新聞 / 2025年1月27日 15時0分
取引先に架空の請求書を提出させて自社に約1億7000万円の損害を与えたとして、大阪府警は27日、物流大手「鴻池運輸」の支店元課長ら男女2人を会社法違反(特別背任)の疑いで逮捕した。鴻池運輸から支払われた代金の一部について容疑者らが取引先からキックバック(還流)を受けていたとみられ、府警は使途の解明を進める。
2人は茨城県鹿嶋市にある鴻池運輸鹿島支店の元厚板課長、光永将憲(38)=大阪市中央区=と、同じ課の部下で元副長の渡辺彩(34)=茨城県神栖市=の両容疑者。
逮捕容疑は共謀して2022年7月~23年10月、取引会社4社に架空の業務に関する請求書を提出するよう依頼。鴻池運輸に代金として総額約1億7727万円を支払わせ、損害を与えた疑いが持たれている。府警は2人の認否を明らかにしていない。
府警捜査2課などによると、厚板課は工業用資材の加工を担当する部署。容疑者らは取引先に、加工作業に必要な業務や材料の発注を請け負ったとする虚偽の請求書を作成するよう求めていた。この請求書を基に鴻池運輸から各社に支払われた代金について、容疑者らは一部を自分たちに還流させていたとされる。府警は容疑者らが私的流用した可能性もあるとみている。
特別背任は、取締役など重要な地位にある人物が自身や第三者の利益のために任務に背き、会社に損害を与えることが要件。府警は、光永容疑者が取引先への業務発注や代金支払いについて決定権を持つ立場だったとみて容疑を適用した。渡辺容疑者は経理処理を担当しており、幹部でなくても共謀関係にあれば同じ容疑に問える「身分なき共犯」とみなした。
光永容疑者らによる資金の不正支出の疑いは、大阪国税局の税務調査がきっかけで23年11月に発覚した。鹿島支店厚板課と本来は取引がないはずの企業に多額の業務請負代金が支払われていたことが分かり、架空取引が明らかになった。
鴻池運輸は両容疑者を24年3月に懲戒解雇。4月にまとめた最終報告書によると、光永容疑者らが21年10月~23年10月に7社と架空取引をし、鴻池運輸から計約4億5000万円が支払われたという。
鴻池運輸は1880(明治13)年創業。物流だけでなく、鉄鋼事業や医療機器事業なども手がけている。従業員数はグループ会社なども含めて約2万4000人。国内外に支店や事業所など200を超す拠点がある。【岩本一希、川地隆史】
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