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虐待情報全件を警察と共有、自治体の4割 対象範囲に課題も

毎日新聞 / 2025年1月27日 15時40分

こども家庭庁=東京都千代田区で2023年11月、三股智子撮影

 児童相談所(児相)が把握した虐待が疑われる事例を警察と全件共有する仕組みを導入した自治体は、児相を設置する自治体の4割となり、少しずつ広がりつつある。情報共有により虐待の深刻化を防ぐ取り組みだが、導入後にもさまざまな課題があるという。

 こども家庭庁によると、児相を設置している自治体は47都道府県や政令市など全国で79。2024年6月時点で、システムを導入するなどして、児相が警察と虐待が疑われる情報を全件で共有する仕組みがあるのは4割に当たる33自治体となっている。

 こども家庭庁は「情報を全件共有するかは地域の実情に応じて判断してほしい」としている。

 埼玉県は20年1月に全国の自治体に先駆け、児相の情報を警察と即時に全件共有するシステムを導入した。虐待をうかがわせる110番を受けると、県警がシステムを使い、過去に虐待の相談や対応がなかったかを照会する。

 システムでの検索がきっかけで、虐待の疑いがあるとして県警から児相への通告につながったケースもあるという。

 ただ、県警が通告した後、児相がその家庭に対してどのような対応をしたのかをシステムで即時に共有できる運用にはなっていない。県警は通告後の対応も共有するよう求めているといい、埼玉県の担当者は「児相に通告された後も警察と児相とで双方向のやりとりができるよう改善を進めていきたい」と話す。

 東京都も25年度に情報共有システムを導入する。全国の児相が対応した虐待相談は22年度に21万4843件と過去最多だったが、うち東京都は1割弱の1万9345件で都道府県別では全国で最も多い。

 これまでの情報共有は、緊急性の高い場合を除き、月1回にまとめて児相から警視庁に一覧表を送付していた。そのため警視庁が情報を把握するまでタイムラグがあった。

 システムの導入により、警視庁管内の102の全ての警察署に端末を設置。都の担当者が情報を入力したり更新したりすれば、それが反映される。

 警察署で虐待に関する通報を受けた際などに、端末で家庭の状況や過去の虐待の情報を調べることができるようになる。緊急性が高い場合は、警視庁が速やかに関係機関への聞き取りを実施し、連携して継続的に家庭の状況を把握することが可能になるという。

 しかし対象は都が運営する11カ所の児相に関するデータのみ。特別区が運営する9カ所の児相は含まれず、従来の月ごとの情報共有にとどまる。

 また転居などで居住する自治体が変更になった場合は、自治体間で情報を引き継がないとシステムには反映されない。

 児童虐待に詳しい日本大の鈴木秀洋教授(危機管理学)は都などが導入するシステムについて「児相と警察の連携の質を上げることにつながる」と評価。一方で、警察の介入で相談をためらうケースなども想定されることから、「保健所や医療、保育、教育機関などとの連携も進め、家庭の状況に応じて役割分担し、継続的に子どもや家庭を支援する体制の構築が必要だ」と指摘している。【岩崎歩】

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