新幹線工事で川の水が枯渇 事業主体が初認定、補償へ 北海道南西部
毎日新聞 / 2025年1月27日 17時44分
北海道新幹線の札幌延伸に向けたトンネル工事現場近くで川の水が枯れ、事業主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が工事が原因だったと結論づけたことが27日、関係者への取材で判明した。延伸工事により河川が消失したと明らかになるのは初めて。機構は今後、河川を営農用水として使えなくなった近くの農家との補償協議を進める。
水枯れが起こったのは北海道南西部の黒松内(くろまつない)町を横断する朱太(しゅぶと)川の2次支川「神社の沢川」。この川から畜産用の水を約40年間引いていた近くの農家が2023年夏ごろ、流量の急激な減少に気付いた。牛の飲み水が不足し、飼育頭数を減らさざるを得なくなるなど影響が出た。
機構の調査では雪解けシーズンの24年4月には水流が確認されたが、翌月には毎分0・2立方メートルに激減し、6月に川が消失した。
神社の沢川の直下では、新青森―新函館北斗が開業している北海道新幹線の札幌延伸に向け、内浦トンネル(全長15キロ)の工事が行われている。トンネル内では湧水が多く発生。毎分約15立方メートルが湧き出ている場所もあり、工事が難航していた。
機構は6月以降、水枯れとトンネル工事が関連している可能性があるとして調査を始めた。地下水の分布状況を電気探査し、トンネルの湧水と神社の沢川の水質を比較。降雨で流量が回復した際に川が地下に入り込む伏流水の位置も調べた。
24年12月に機構がまとめた調査結果によると、周辺の地下水がトンネル付近で消失した可能性が判明。さらに、近くのトンネル工事現場3カ所の湧水の成分分析などから、神社の沢川の水が地中を通ってトンネルに到達した可能性が示された。周辺で他に地下の工事は行われておらず、機構は新幹線工事が原因で水枯れが発生したと認定した。
内浦トンネルでは24年12月時点でも毎分平均6・3立方メートルの湧水があるが、調査結果判明後もトンネル工事は続いており、掘削は25年8月に、コンクリート化は26年10月に終わる予定。機構は工事が完了しても川が復活する可能性は低いとして、農家との補償協議に入る。
機構は毎日新聞の取材に、流量や生物相の季節変動の確認も進めて最終調査結果は25年秋ごろに示すとした上で、「利水者が困らないよう丁寧に対応する」としている。【片野裕之】
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