死刑判決の被告が自ら控訴取り下げ、過去にも 無効の主張は可能
毎日新聞 / 2025年1月28日 21時6分
36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(46)が控訴を取り下げたことが明らかになった。1審では求刑通り死刑が言い渡され、2審でも刑事責任能力の有無や程度が争点になる見通しだった。控訴は被告本人が取り下げることが可能で、死刑が確定した。27日付。
死刑判決を受けた被告が自ら控訴を取り下げることは過去の事件でもあった。ただ、取り下げの有効性を弁護人が争い、1審判決から死刑確定まで2年半以上を要したケースもある。
刑事訴訟法は、被告が控訴を取り下げられると規定。いったん取り下げれば、さらなる控訴はできず、判決が確定する。
一方、法律に明確な規定はないものの、弁護人は取り下げの無効を主張できる。死刑判決を巡っては1995年、最高裁が取り下げを無効とした例がある。神奈川県藤沢市などで女子高校生やその母親ら5人を殺害した藤間静波元死刑囚(2007年に執行)の控訴取り下げについて、死刑判決の衝撃で自己の権利を守る能力を著しく制限されていたと判断し、公判が再開された。
しかし、取り下げが無効と認められるのはまれだ。大阪府寝屋川市で中学1年の男女2人が殺害された事件では、1審判決(18年12月)で死刑を言い渡された山田浩二死刑囚が19年5月に控訴を取り下げた。弁護人の申し立てを受けた大阪高裁は同年12月、「死刑確定を明確に意識していなかった疑いがある」といったんは取り下げを無効と判断したが、検察側の申し立てにより高裁の別の裁判官が審理を差し戻した。その後、死刑囚が2度目の控訴取り下げをしたことから、最終的に最高裁で21年8月、取り下げは有効だとして死刑が確定した。
16年に相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が殺害された事件では、1審(20年3月)で死刑判決を受けた植松聖死刑囚が控訴を取り下げた。弁護人が取り下げは無効だと主張して最高裁まで争ったが、22年12月に有効との判断が確定している。【高良駿輔】
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