1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

生活保護減額訴訟で原告勝訴 福岡高裁裁判長「厚労相の判断は違法」

毎日新聞 / 2025年1月29日 18時25分

控訴審判決後に「逆転勝訴」などと書かれた紙を掲げる原告団ら=福岡市中央区の福岡高裁前で2025年1月29日午前11時9分、矢頭智剛撮影

 生活保護費の引き下げは生存権を保障した憲法25条などに違反するとして、福岡県内の男女計39人が国や居住自治体に賠償や減額決定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は29日、請求を棄却した1審・福岡地裁判決(2021年5月)を変更し、原告37人について自治体の減額決定を取り消した。松田典浩裁判長は「厚生労働相の判断は生活保護法に反し、違法」と述べた。

 全国29地裁に起こされた同種訴訟で5件目の高裁判決。そのうち減額を取り消す判決は、国家賠償も命じた名古屋高裁判決(23年11月)に続いて2件目となった。1審判決は29件のうち、減額取り消しが18件、請求棄却が11件。司法判断は割れており、今後、最高裁が統一判断を示す見通し。

 国は13~15年、生活保護費のうち食費や光熱費などに充てる「生活扶助費」の基準額の算定に、物価下落率を基にした「デフレ調整」や、生活保護世帯と一般の低所得者世帯の生活費を比べて見直す「ゆがみ調整」を反映。3年間で基準額を平均6・5%引き下げ、計約670億円を削減した。1審判決は、減額決定は厚労相の裁量権の範囲内として原告側の敗訴とした。

 高裁判決は、ゆがみ調整は不合理ではないとしたが、デフレ調整で一般世帯の消費構造を基に物価下落率が算定された点を問題視した。生活保護世帯は生活に不可欠な食費や光熱費への消費割合が高いのに対し、一般世帯は生活に必ずしも必要ではない教養娯楽費などにも多く支出しており「消費構造が明確に異なる」と指摘。「要保護者の需要を基として保護を行う生活保護法の趣旨・目的に反する過誤・欠落がある。不合理で違法だ」と述べ、減額決定を取り消した。

 ただ、減額を取り消せば損害は回復するとして国の賠償責任は認めず、原告2人については訴訟提起に必要な手続きを期間内にしていなかったとして控訴を棄却した。

 厚労省は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。【志村一也】

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください