パリの森で広がる売春 「より安く、より危険に」 買春規制の影響か
毎日新聞 / 2025年2月3日 5時0分
世界有数の観光都市・パリのある森には、日中から多くの女性たちが立つ。「路上売春」だ。目が合った通行人を誘う女性たちの姿は、パリでは繁華街ではなく、広大な森の中にある。
「30ユーロ(約4800円)だけど、どう?」
森の中を100メートルほど歩けば、数人から声をかけられる。
こうした売買春を巡り、買春に罰則を科す法律を導入したフランスで、「被害者」と位置づけられるセックスワーカーや人権団体が、この規制に反発する事態となっている。売春をする側に刑罰を科す日本とは正反対だが、どうして波紋を呼んでいるのか。
2024年夏、オリンピックとパラリンピックが開かれたパリ市の西の外れにある森林公園「ブーローニュの森」。女性たちは森の中に張ったテントなどで性的なサービスをするために客を待っていた。森を訪れた記者に女性たちは「30ユーロ」と判で押したように料金を口にする。
フランスでは16年に買春に刑罰を科す法律が導入された。1500ユーロ(約24万円)以上の罰金を科す内容で、未成年者相手や再犯の場合はより刑罰が重くなる。
刑罰を科すのは「売買春は本質的に暴力であり根絶すべきだ」という政府の考えがあるからだ。ところが、セックスワーカー261人が19年に「買春禁止は欧州人権条約に違反している」として欧州人権裁判所に提訴した。
法律によって、売春する側は「被害者」として守られるようになったはずなのに、なぜ提訴に至ったのか。
彼女らは裁判で、買春の規制によって売春の需要が減ったことで結果的に「買う側」に有利な状況が生まれたと主張。そして、「より低い対価で、より危険な行為をせざるを得なくなった」と訴えたのだ。
裁判所は24年7月、「条約違反には当たらない」という裁定を下した。これに対し、国際人権団体の「アムネスティ・インターナショナル」や「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は「セックスワーカーが医療や福祉につながるのを妨げ、虐待や暴力を受ける可能性を高める」として買春規制に反対している。
フランス政府の報告書によると、売春する側の推計人数は15年の3万人に比べて24年は4万人に増えており、売買春の根絶には抜本的な解決策が求められる。
「どんどん稼げなくなっている。そして、危ない目にも遭う」。ブーローニュの森で売春をして5年ほどになるという女性は取材にそうこぼした。【春増翔太】
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