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日光の社寺、精緻に描いた「土産絵」 15日から栃木・日光で企画展

毎日新聞 / 2025年2月6日 9時15分

国府浜国太郎(後の小杉放菴)「東照宮・陽明門」1900年=小杉放菴記念日光美術館提供

 明治末期~昭和に活躍した日光出身の洋画家、小杉放菴(ほうあん)(1881~1964年)にちなんだ「小杉放菴記念日光美術館」(栃木県日光市山内)で15日から、企画展「描かれた日光の社寺」が開催される。「日光の社寺」世界遺産登録25周年を記念し、かつて外国人観光客向けの日光土産として人気を博した精緻な水彩画「土産絵」に焦点を当てる。

 日光は、明治期に鉄道が開通して多くの外国人が避暑に訪れるようになり、国際的な観光地として定着した。小杉らは、東照宮の陽明門や神橋など、日光の代表的な景観を綿密な筆致で描写した水彩風景画を制作。土産絵と呼ばれ、1890年代後半~1900年代、日光を訪れた外国人観光客が購入して持ち帰る記念品として人気となった。同美術館は1997年の開館以来、一度は海外に渡った土産絵を買い取って収集。企画展ではコレクションから約50点が展示される。

 紹介されるのは、当時「国府浜国太郎」「小杉未醒(みせい)」の名前で活動していた小杉放菴のほか、水戸出身で日光に移住し、植物学者の牧野富太郎らとも親交を深めた五百城文哉(いおき・ぶんさい)(1863~1906年)▽大蔵省印刷局に勤め、退職後に日光を拠点としたと伝わる河久保正名(まさな)(生没年不明)▽野崎華年(かねん)(1862~1936年)――らの作品。また、収蔵品の中には、緻密な描写で高い技量が発揮されているものの、ローマ字で「YOKOTSUKA」や「Y.ITO」などとのみ署名されたり署名がなかったりして制作者の特定が困難なものも多く、これら「謎の無名作家」の作品も鑑賞できる。

 同美術館によると当時、欧州で日本趣味が流行したことを背景に、訪日した英国人画家らが日本の風景を題材にした水彩画を数多く発表。実景を写実的に捉え芸術として表現する新しい技法は国内の画家にも大きな影響を与え、水彩画がブームとなり、競って描かれたという。

 一方、日光で水準の高い土産絵が数多く作られた舞台裏には、旧壬生藩士の実業家、守田兵蔵(1844~1925年)の尽力があった。守田は日光の中心部に、美術工芸品の陳列所「鐘美館(しょうびかん)」を開設。五百城や沼辺強太郎(生没年不詳)を専属画家に迎え、若手芸術家を育成し、絵画や彫刻を制作販売した。鐘美館で扱う芸術工芸品を「日光ブランド」と名付けて海外に発信し、市場価値を高めた。鐘美館は田母沢御用邸の完成(1899年)に伴い活動を終えたが、企画展では、現代でいうアートプロデューサーの先駆けにあたる守田の活動や鐘美館ゆかりの作品も紹介される。

 関連イベントとして、壬生町立歴史民俗資料館の中野正人学芸員による講演会「『聖地日光』をアートプロデュースした壬生藩士」が3月8日午後2時からある。定員50人(要予約、先着順)、無料(入館料は必要)。また、同美術館学芸員のギャラリートークが2月16日、3月1日、4月5日の各午前11時から開催される(予約不要、当日先着順)。

 会期は4月20日まで、午前9時半~午後5時(入場は午後4時半まで)。月曜休館(休日の2月24日は開館、同25日休館)。入館料は一般730円、大学生510円、高校生以下無料。問い合わせは同美術館(0288・50・1200)。【藤田祐子】

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