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「写真になってはだめ」 広島の写実画家が追い求める人間のリアル

毎日新聞 / 2025年2月6日 10時45分

最新作を手にする三重野慶さん=呉市の昭和東まちづくりセンターで2025年1月14日午後4時26分、中村清雅撮影

 三重野慶さん(39)=広島県呉市=は、モデルの表情や仕草、周囲の光のバランスなどを限りなくリアルに表現する写実絵画の描き手だ。作品を見た人からは「写真みたい」とよく言われるが、本意ではないという。「自分の作品は写真ではなく写実。写真になってはだめという気持ちで描いている」と語る。

 呉市出身で、子供の頃からジブリ映画やマンガが好きだった。進学した呉高専時代は、パソコンで人物のイラスト画などを描いていたが、「独学では限界がある」と感じた。一念発起して3年時に退学し、広島市立大芸術学部で油絵を学ぶことにした。師事した野田弘志氏や磯江毅氏といった写実絵画の巨匠たちからは技術的なことよりも、写実の精神を学んだという。「写実とはものを写すだけではなく、生きている人の存在そのものを描くことだと教えられた。ハイデガーなどの哲学書を読めとも指導された」と振り返る。

 2007年に大学卒業後は創作時間を確保するため、就職せずにアルバイトをしながら描き続けた。公募展などへの挑戦を地道に続けていくうちに、画廊やギャラリーなどから声が掛かるようになり、2021年に画集を出版。現在、写実絵画を専門に収集するホキ美術館(千葉市)に7作品が収蔵されている。

 気鋭の写実画家として知られるようになった今でも、活動の拠点は呉に置く。「呉の街並みや風景を見て培った感覚を大切にしながら描いている。東京にわざわざ行くメリットはない」。モデルの写真を見ながら、自宅で絵筆を動かすが、1年に完成する作品は5、6点。煮詰まることもあるが、呉市内で主宰する絵画教室での指導が適度なリフレッシュになり、人に教えることで新たに得られる気付きもあるという。

 「写実絵画の世界は奥が深く、30代や40代はまだ若造。死ぬまでやっても『完成』には到達しないかもしれないが、もっともっとうまくなりたい」。リアルを極める旅は続く。【中村清雅】

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