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閉じこもっていたい時もあるけれど…失語症への理解広げるため奮闘

毎日新聞 / 2025年2月10日 14時30分

「失語症を知ってほしい」と当事者が集まる会を立ち上げた礒嶋節子さん=滋賀県愛荘町の町立福祉センター「愛の郷」で2024年12月21日午後4時54分、飯塚りりん撮影

 脳梗塞(こうそく)などの後遺症で会話や読み書きが困難になる「失語症」。ある日突然、言葉を失う戸惑いや悲しみと向き合う失語症者たちのありのままの姿を、広まらない滋賀県内の支援体制の実情とともに伝える。

話すのが好き 一転、閉じこもった3年

 「失語症? そんな病気あるの?」

 会話や読み書きが困難になる「失語症」者の礒嶋節子さん(73)=滋賀県愛荘町=は何度もこんな言葉を投げかけられた。発症者が集まって、日ごろの悩みや思いを語り合う会を礒嶋さんが立ち上げたのはそんなやり取りをなくしたいからだった。

 礒嶋さんは16年前に脳梗塞を起こし、高次脳機能障害と診断され失語症も発症した。右半身に感覚まひも残った。

 平仮名が書けなくなったが、漢字の形だけは覚えていた。泣きながらノートに自分や家族の名前を漢字で確かめた。会話は自分から言葉が出ず、問いかけに対して「はい」という2文字を言うのがやっとだった。看護師だった礒嶋さんは、元々人前で話すのが好きだったこともあり、話せない自分を受け入れられなかった。次第に「家の外に出ることが怖くなった」。約3年、家に閉じこもった。

 一方で、家族に支えられながら話すためのリハビリは続けることができた。今は時間はかかるが人前で話したり、平仮名や漢字を使って長文を書いたりすることができるまでに回復した。

 外出して人と話す機会が増えるようになると、社会での失語症の認知度の低さを痛感するようになった。「私には失語症があります。言葉が分かりにくいこともありますが、ゆっくりと話します」とさまざまな窓口で伝えようとしたが、無視されてしまったり、最後まで聞いてもらえなかったりした。

 上手に説明できない自分ももどかしかった。礒嶋さんは発症者の自分たちから変わろうと思った。

 「私たちは言いたいのに言えない。沈黙し、必然的に閉じこもりがちになる。でも失語症を理解してもらうには、拙い言葉でも当事者が協力して大きな声を届けることが大切ではないか」

 2022年に県内で初となる失語症者が集まれる市民団体「お話しこつこつ会」を愛荘町に立ち上げた。会の名前には、日常生活では会話を待ってもらえないことが多いため、ゆっくりと話したいという思いを込めた。

 「今これを言いたいと思っても言葉が出てこない。思いとは別の言葉が出てきてしまう。皆さん自分の言いたいことを言い切れた経験ありますか?」。会ではこんな問いかけを話題にしている。月に1回、同町立福祉センター「愛の郷(さと)」で、当事者5人やその家族が日ごろの悩みなどを共有し、失語症を知ってもらうために話し合っている。

 失語症理解のために奮闘する礒嶋さんだが、「今でも話すことは大変で、家に閉じこもっていたいと思う時がある」。それだけ言葉を発しにくいという苦労は大きい。「それでも誰かと話したいと思う自分がいる」と前を向く。

 同会への問い合わせは礒嶋さん(090・4307・7787)。【飯塚りりん】

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