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徳島県、県立校体育館の空調整備 多額費用支える「頭金不要ローン」

毎日新聞 / 2025年2月8日 6時15分

徳島県立徳島中央高校体育館に設置されている空調の室内機。災害時に避難所として使用されるほか、寒い時期の卒業式などでも活用されている=徳島市の同校で2025年2月7日午後2時28分、植松晃一撮影

 地震や水害といった大規模災害の発生時、体育館などの学校施設が住民向けの避難所となる例は多い。近年の地球温暖化による猛暑で体育館内での熱中症リスクも高まっている。このような状況を踏まえ、南海トラフ巨大地震の発生が迫る徳島県が、県立学校にある体育館などで2026年度末までに空調を整備する方針を固めた。

 5日に発表された25年度一般会計当初予算案に、空調化や照明のLED化、学校トイレの洋式化といった県立学校施設機能強化事業として62億円超が盛り込まれた。事業は24年度も実施しているが、24年度当初予算額の約14億円強と比べ、4倍超の規模だ。

 徳島には県立学校が44あり、このうち高校2校、特別支援学校3校の体育館には既に空調が設置されている。また、特別支援学校8校の体育館でも、空調化が進められている。残る高校31校では、体育館や格技場、武道場など避難所としての活用を想定している体育施設に25、26年度でヒートポンプ式空調機を設置する。

 体育館で実施する授業や部活動などの際にも活用する。停電が想定される災害時も使えるよう、燃料はガスとする計画で、都市ガス供給地域では都市ガス、それ以外の地域ではプロパンガスを使う方針だ。プロパンガスの場合、ガスボンベを並べるが、津波などによる浸水が想定される学校では、浸水の恐れが低い高台にガスタンクを設ける。いずれも発災から3日程度、運転できる量のガスをタンクやボンベにためる。

 1995年1月に発生した阪神大震災では、学校施設の体育館などに避難したものの、厳しい冷え込みなどから体調を崩して亡くなる「災害関連死」が高齢者を中心に相次いだ。2024年の元日に発生した能登半島地震でも、死者の半数以上は「災害関連死」とされ、避難生活の環境改善につながる施設整備が急務となっている。

自治体に有利な「緊防債」活用

 「頭金不要のローン」と言うと、怪しげな借金(借入金)のにおいもする。だが、多額の予算案を組んで学校体育施設の空調化を加速する徳島県を後押しするのは、「頭金不要のローン」とでも言える仕組みだった。

 その「ローン」とは、東日本大震災(2011年)を教訓に、防災・減災対策の地方単独事業が早急に進むよう、地方自治体が発行する地方債の一つとして創設された「緊急防災・減災事業債」(緊防債(きんぼうさい))だ。防災や減災につながる事業を促そうという国の狙いもあり、緊防債は自治体にとって非常に有利な制度となっている。

 自治体が国の補助制度などを使わず、単独で事業を進める場合に発行する地方債と比較してみる。事業で必要な資金のうち地方債での調達分を充てられる上限である「充当率」をみると、一般的な地方債なら75%だが、緊防債は100%と全額だ。充当率が75%なら、残る25%は自治体が自前の一般財源で準備する必要があるが、緊防債は不要なのだ。

 個人が住宅や自動車を買う際のローンに例えると、25%相当の「頭金」をまず準備する必要がある通常の地方債に対し、緊防債はいわば「頭金ゼロ」で借り入れができるのだ。

 緊防債が自治体にとって有利な点はもう一つある。それは返済原資だ。単独事業のために発行した地方債は当然、その自治体が後に返済(償還)する。ところが、緊防債は国が70%を地方交付税で負担してくれるのだ。つまり、発行額のうち、自治体負担は最終的に30%で済む。自治体の防災・減災対策を加速させたい国の狙いがにじむ枠組みだ。

 そして、徳島県では、後藤田正純知事が23年5月の就任以来、この緊防債の活用により防災・減災対策を加速する必要性を度々主張してきた。県は緊防債を24年度当初予算でも約35億円発行したが、25年度当初予算案では約72億円に拡大する。そのうち、約42億円を県立学校体育館の空調化などに充て、南海トラフ地震といった災害への供えを急ぐ方針だ。【植松晃一】

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